・・・丁度、その時、御会席で御膳が出たので、暫くはいろいろな話で賑やかだったが、中洲の大将は、房さんの年をとったのに、よくよく驚いたと見えて、「ああも変るものかね、辻番の老爺のようになっちゃあ、房さんもおしまいだ。」「いつか、あなたがおっ・・・ 芥川竜之介 「老年」
・・・ その日の料理も、本式の会席膳で鯛なども附いていた。私は紋服を着せられた。記念の写真もうつした。「修治さん、ちょっと。」中畑さんは私を隣室へ連れて行った。そこには、北さんもいた。 私を坐らせて、それからお二人も私の前にきちんと坐・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・それに月光がさして忽然と清談の会席が眼前に現われる。こういったような心像変換の現象は少なくもわれわれの夢の中には往々起こる現象であっておそらく何人も経験するところであろう。しかし、私は当時の去来の頭の中にここに私の書いたこのとおりの心理過程・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・それ故大正改元のころには、山谷の八百善、吉原の兼子、下谷の伊予紋、星ヶ岡の茶寮などいう会席茶屋では食後に果物を出すようなことはなかったが、いつともなく古式を棄てるようになった。 わたくしの若い時分、明治三十年頃にはわれわれはまだ林檎もバ・・・ 永井荷風 「葛飾土産」
・・・政治の気風が学問に伝染してなお広く他の部分に波及するときは、人間万事、政党をもって敵味方を作り、商売工業も政党中に籠絡せられて、はなはだしきは医学士が病者を診察するにも、寺僧または会席の主人が人に座を貸すにも、政派の敵味方を問うの奇観を呈す・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
第一私どもの目からみると議会内の大蔵委員会という重要な新給与予算の委員会席上で、あんなに酔うほど酒がでるということがそもそもひどいことだと思います。なにもうちでのめない連中ではなし、ごあいきょうの程度をこえています。公務員・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
出典:青空文庫