・・・文学は一見隆盛であって、しかもその実質は低められもしあるいは亀裂が入り、あるいは一新の前の薄闇におかれている。よかれあしかれ、男の作家のもつ社会性のひろさ、敏感さ、積極性がそういう文学上の混乱を示しているのであるが、婦人作家たちの多くは、そ・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・もし作家が大衆化の意味をあやまって、後者の態度にしたがうようなことがあれば、それは大衆を低めているものの力に屈すと同時に、作家自身を無力化せしめている力にも自身から叩頭することになってしまうであろう。 近頃は、嘗てプロレタリア文学運動に・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・ 文学作品に対する健全で人生的な発展的鑑賞の気風が昨今は低められている。それ故、例えば文芸映画についても、文学作品そのものへの鑑賞が無規準ななりの或る好評に招きよせられて映画化し、その映画化によって、じかに文学作品をよこよりもっとうわす・・・ 宮本百合子 「観る人・観せられる人」
・・・漱石は、結婚が女を人間的に低め、そのために男も苦しみ、相互の悲劇であることを見ながら、やはり、結婚や家庭の日暮しというものの旧来のしきたりに対しては反抗しきっていない。女が結婚するとわるくなるという例から見て、何が女の人間性を結婚において害・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・ 我知らず私も声を低め、「どんな?」「プラチナの懐中時計が二つとも見えなくなっているから、お前が持って行ったのかと思っていたよ」「知らないことよ。……本当に見えないの?」 びっくりして私は少し高い声を出した。父には私のび・・・ 宮本百合子 「わが父」
・・・この頃から軍需生産が急に能率を低めてきたと共に物価が上り始めた。昭和十六年以来昂まって来ているインフレーションは、表面上の労働賃銀をぐんぐん上げて、その頃までは物価の昂騰と労働賃銀の増大とはほぼ釣り合いを保って上向きに来たのであった。けれど・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫