・・・女学校の女の子は年も稚く、肉体の変化も激しい時期であるし体質もさまざまであろうと思う。一様に日傘をささないというようなことは、外見の上では一つのジェスチュアであるけれど、健康の上にどれだけ有益なのだろう。 校長だの教師だの団体の指導者だ・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・ 実際の場合として、産め、殖やせという標語をそれだけの範囲でうけて、互に結婚して、偶然にも子供のもてない良人の体質であったとき、その女性はどうするのだろう。産み、殖す。それを目的として結婚したのに、その中心が失われたとすれば、もうその結・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・は、ひろく共感を誘う妻のシチュエーションであるけれども、書き出しの女性らしい文章の体質と、すこしあとの方の文章と、どこかちがって来ているのは、どうしてだったろう。後半いまの風俗小説風の世相が女主人公の生活にふれて来てから、最後のむすびに到る・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・現代史のふたまたにかかってひき裂かれるにまかせておいたり、さもなければ、生きようとする本能と最少抵抗線をたどりやすい日本の精神の体質にまかせて、どっちかの木の股にすがりついてしまうにまかせておくことは歴史の前に許されない。その責任を痛切にわ・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・そういう体質があるのですって。咲枝は疲れが出て、背中をいたがり、おふろのとき、私がサロメチールを背中じゅうにフーフーいってぬってやります。太郎はこの頃はダッチャン、アアチャン、オバチャン、みんないるので大満悦です。かぜもひかず、くるくるして・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・十一歳で父に死別した後、病弱な神経質体質の少年であるジイドは、凡ての悪行為、悪思考と呼ばれているものに近づくまいとして戦々兢々として暮す三人の女にとりまかれ、芝居は棧敷でなければ観てはいけません、旅行は一等でなければしてはいけませんという境・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・美しくなろうと思えば、自分の体質と皮膚とをよく知って、自分によく合った化粧品をきめて、つづけてゆき、新聞にでる総ての化粧品の広告にまどわされることは不必要であることを。 人生の進歩的な建設に、わたしたちはこの常識をもって闘うべきです。歴・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・ 当時の中央委員たちによって、スパイとして調べられていた小畑達夫が特異体質のため突然死去したことは、警視庁に全く好都合のデマゴギーの種となった。共産党員は、永い抑圧の歴史の中で沢山の誹謗に耐えて来たのであったが、この事件に関係のあった当・・・ 宮本百合子 「信義について」
・・・のもっている作品として体質がいかにもバックのアメリカの婦人であることを思わせる量感に溢れていることである。「母の肖像」もそのことでは極めて独自な生命にみちた興味ふかい作品であった。しかし、私たちの心をうつ今日の感想はバックが「大地」をかき得・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・田舎暮しからみたら東京の生活は比較にならないほどいい、と云われる言葉は、都会の空気に代々馴れて、結核なども陽性反応を示す体質になっている人々の放言である。 勤労青少年たちの体はよくない。中国地方の或る工業地帯が故郷である若い人が、この間・・・ 宮本百合子 「若きいのちを」
出典:青空文庫