・・・今日来た郡山の新聞記者は、明にその傾向を語ると共に、そう云う一つの変動が起った場合に余波を受けて起る箇人的野心、或は、人間の本能的功名心を示して居る。 彼は、政治記者である。 彼の云うところによると、市に大字桑野として編入されること・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・美妙のどったんばったん的措辞も幾分その余波にや○雲中語に、紫琴という女流作家の名が見える。誰であろう。よい作品はなかったらしいが。○鷸掻、三人冗語、雲中語をとびとびによみ、明治文学史のよいのが一日も早く出ることを希う。・・・ 宮本百合子 「無題(六)」
・・・ さまざまの政治的変動の余波を蒙って、多くの波瀾を経ながら辛うじて疏水事業が進行しはじめたとき、米沢藩だの久留米藩だのから下級武士たちがそれぞれ一家をひきつれて開墾へ移住して来た。そしてそれぞれにもとの藩の名をつけて久留米開墾という風に・・・ 宮本百合子 「村の三代」
・・・大都会という大都会が被害を被り、多くの小都市が焼かれ、村々も軍事施設の余波を被って思いもかけない被害を受けた。この頃から軍需生産が急に能率を低めてきたと共に物価が上り始めた。昭和十六年以来昂まって来ているインフレーションは、表面上の労働賃銀・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・この時初めて、私共は、前日の地震が東京からの余波であったことを知った。号外によれば、一日の十二時二分前、東京及び湘南地方に大地震があり、多くの家屋が倒壊すると同時に、四十八箇所から火を発し、警視庁、帝劇、三越、白木屋、東京駅、帝国大学その他・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
・・・ 幕府滅亡の余波で、江戸の騒がしかった年に、仲平は七十で表向き隠居した。まもなく海嶽楼は類焼したので、しばらく藩の上邸や下邸に入っていて、市中の騒がしい最中に、王子在領家村の農高橋善兵衛が弟政吉の家にひそんだ。須磨子は三年前に飫肥へ・・・ 森鴎外 「安井夫人」
出典:青空文庫