・・・いやしくも、それ等の芸術に依拠して、真の美感を与えよく芸術の使命を果すものありとすれば、それは、たしかに天才の仕事でなければならぬ。私達は、かゝる芸術の存在理由をも、効果をも疑うものでないが、芸術は、創造であり、個的でなければならぬところに・・・ 小川未明 「純情主義を想う」
・・・複雑なる主義に、たとえば、政治に、経済に、既成の哲学に、依拠し、隷属しなければならぬとするごときは迷蒙である。こうしたことによって何等か、感激を呼び起した場合がなかったと言わない。しかし、いまは、この重圧のために、空想を、想像を、拘束されて・・・ 小川未明 「単純化は唯一の武器だ」
・・・それは如何なる条件にしたがい、如何なる法則に依拠するか、かかる問いには終局的答えを与え得る。これが明らかとなって初めて、ある特定の意志決定がどの程度まで道徳にかなっているかを判断することができるのである。倫理学はかかる問いに答えることを任務・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・ 彼は世界と人倫との究竟の理法と依拠とを求めずにはいられなかった。当時の学問と思想との文化的所与の下に、彼がそれを仏法に求めたのは当然であった。しかし仏法とは一体何であろう。当時の仏教は倶舎、律、真言、法相、三論、華厳、浄土、禅等と、八・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
出典:青空文庫