・・・それで金はなくてもかまわないから、どうしても道楽をしない保険付きの堅い人にもらってもらおうと、夫婦の間に相談がまとまったのである。 自分の妻は先方から聞いてきたとおりをこういうふうに詳しくくりかえして自分に話したのち、重吉さんならまちが・・・ 夏目漱石 「手紙」
・・・「日本から来たんです」「ふーむ。そりゃ結構だ。――わかりましたか、ホレそこを真直行って……」ともう一遍教えてくれた。 入ってゆくと廊下で、左側には「賃銀支払金庫」「保険貯金」などと札の下った窓口が並んでいる。右側に戸がなるほど二・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・番の特長は、それがいつでも大衆の活々した日常生活と結びついているところにあると云うはじまりで、細かくソヴェト同盟の失業と搾取のない労働者の生活、政治上の権利、ソヴェト同盟の工場学校、労働者クラブ、社会保険のことなどを演説しました。 この・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・丸の内の宏壮な建物を見てもわかるように、保険会社は富んでいるものだが、現在、生命保険会社の支払い方法は、他殺だと保険金詐欺でない限り普通の病死と同じに全額を支払うことになっているのだそうだ。自殺の場合、契約後一年――三年は全く支払わず、三年・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・ 例えばいろいろな火災保険であるとか、戦時保険であるとか、また、退職手当というものも、大分使い果してしまっているのであります。別に私たちのところに、何万円もの金があって、それが自由になるなどという人は一般にはないわけです。 モラトリ・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・なぜないかといえば、人間は生きる以上は働く権利があるのですから、働く権利が根本的に守られていれば、自分の能力を良心的に十分働かせてゆけば、その社会から働いているものという意味で、養老保険も失業保険も健康に対する保険も、母性保護のいろいろな設・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・これらのひとびとは国民健康保険、養老年金、傷害保険、その他一年、二ヵ月の休暇や、いろいろな条件をもっています。お母さんが病気をしたり姙娠した場合は、働いている人の妻であり、勤労者の妻である、組合員の妻であるということで、組合から地区の病院、・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・ すべての人民は働く権利がある、ということが男女差別の扱いなく行われ、すべての働いて生きる者は必要な社会保険によって最低保障は与えられるということが実現しなければ、結婚という一つの場合だけでさえ当事者の「自由な意志」というものは、皮肉な・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・失業保険はないし、年とるまで工場で搾られ、あげ句に放り出されれば乞食でもするしか生きる道がなかった。 工場に働くプロレタリアートと地主の野良を耕す貧農にとって、暮らしの辛いこととブルジョアと地主とにしぼられることは、男も女も全く同じだっ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
保険会社の役人テオドル・フィンクは汽車でウィインからリヴィエラへ立った。途中で旅行案内を調べて見ると、ヴェロナへ夜中に着いて、接続汽車を二時間待たなくてはならないということが分かった。一体気分が好くないのだから、こんなことを見付けて見・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
出典:青空文庫