・・・ですから彼はピシアスとデイモンとの二人のこの信実と友愛とを見ると、本当に何よりもうらやましくて堪りませんでした。 彼は二人に向ってたのみました。「どうぞ、これから私をもお前さんたち二人の仲間に入れておくれ。そして三人で本当の友だちに・・・ 鈴木三重吉 「デイモンとピシアス」
・・・私の三人の知人は、心から満洲を愛し、素知らぬ振りして満洲に住み、全人類を貫く「愛と信実」の表現に苦闘している様子であります。 太宰治 「三月三十日」
・・・きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる。メロスは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨・・・ 太宰治 「走れメロス」
・・・総てこれらのことを知っていて幼稚なイリュージョンを失っているからこそ、人間の信実の柱としての結合を期待できる愛を求めているのが今日の痛切な心情であると思う。人口の九割五分迄が勤労して生きて行く人々である。その勤労して生きる人民の人口比率を見・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・そしてゴーリキイの話の中に織り交るすべての余計な不信実なものを切り去るのであった。又この「結構さん」は、極くありふれた云い方で、しかも野蛮な環境の中で暮している幼いゴーリキイの智慧の芽生えを刺戟するようなことを云った。例えば、彼は云う。・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・そして、ゴーリキイの話の中に織り交る、すべての余計な不信実なものを切り去るのであった。又この「結構さん」は、極くありふれた云い方で、しかも野蛮な環境の中で暮している幼いゴーリキイの智慧の芽生えを刺戟するようなことを云った。例えば、彼は云う。・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
出典:青空文庫