・・・子供は、自分の好きな学科を修得し、それによって伸びる決意を有しています。しかるに、その子供に人生の希望と高貴な感激を与えて、真に愛育することを忘れて、つまらぬ虚栄心のために、むずかしいと評判されるような学校へ入れようとしたり、子供の力量や、・・・ 小川未明 「お母さんは僕達の太陽」
・・・ 科学者の修得し研究する知識はその本質上別にそれが新しく発見されたか旧くから知られているかによって価値を定むべきものではない。科学上の真理は常に新鮮なるべきもので骨董趣味とは没交渉であるべきように見える。しかし実際は科学上にも一種の骨董・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
・・・しかしもしやこの二つの学科がこれを修得するに要する頭脳の働き方の上で本質的に互いに共通な因子を持っているようなことはないか。これは一つの問題になる。 ちょっと考えると数学は純粋な論理の系統であり、語学は偶然なものの偶然な寄り集まりのよう・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・ われわれが小学校中学校高等学校を経て大学を卒業するまでの永い年月の間に修得したはずの知識は、分量で測ることが出来るとすればずいぶん多量なものであろうと思われる。十七、八年の間かじりつづけ、呑み込みつづけて来た知識のどれだけのプロセント・・・ 寺田寅彦 「鉛をかじる虫」
・・・フランス人の画を見てすぐに要領を修得したような軽薄な絵を見るよりは数倍気持がいいと思う。 未来派の絵というと、ギタアが出て来るのは、あれはどういう理由によるのだろうか。他にも同等もしくは以上に適当な題材はいくらでもあるだろうが。・・・ 寺田寅彦 「二科会展覧会雑感」
・・・ 二 俳句の精神とその修得の反応 この講座の編集者から私は「俳句の精神」という課題を授けられた。この精神とは何を意味するか私にはよくわからない。たぶん「わび」とか「さびしおり」とか「風流」とかいうことの解説を要求され・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・また一つには東京市民が明治以来のいわゆる文明開化中毒のために徳川時代に多大の犠牲を払って修得した火事教育をきれいに忘れてしまって、消防の事は警察の手にさえ任せておけばそれで永久に安心であると思い込み、警察のほうでもまたそうとばかり信じ切って・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・ 二十歳代の青年期に蜃気楼のような希望の幻影を追いながら脇目もふらずに芸能の修得に勉めて来た人々の群が、三十前後に実世界の闘技場の埒内へ追い込まれ、そこで銘々のとるべきコースや位置が割り当てられる。競技の進行するに従って自然に優勝者と劣・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・彼らはただ現時の最高のアカデミックの課程を修得したルクレチウスにほかならないのである。 エネルギー不滅論の祖とせらるるロベルト・マイアーは最もよくルクレチウスの衣鉢を伝えた後裔であった。しかし彼は不幸にしてその当代の物理学に精通しなかっ・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・もたず未知の世界に立っている p.179○彼は生を痛感することを希う p.169○原泉から飲むことを欲す p.176○彼等は生活を真裸となって感じ、生存の歓喜を痛感しようとはしても、生活を修得しようとか支配しようとは思わない。p・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
出典:青空文庫