・・・信用出来もしない候補者に投票なんかしたくないと思って、良心的に棄権した場合もあったかもしれない。 しかし、四月十日にきめられている今度の選挙は、私たちに、どんな心もちを抱かせているだろうか。少くとも、これについて無関心ではいられないもの・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・トルーマン大統領の敵手であった共和党の候補者デューイ夫妻の意外さと、ギャラップその他の世論調査所の人々の長い顔とは、一九四八年の世界のユーモアとなった。最も真面目な教訓の一つでもあった。汗顔の至り、という東洋の適切な形容のことばを我身にひき・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・の世界に随喜して、最大限のほめ言葉を惜しまない人々でも、ノーベル賞、世界平和賞のために日本から送られるべき候補作品としてはただ一人も「細雪」を推薦しなかった事実である。炬燵の中の雪見酒めいた文学の風情は、第二次大戦後の人類が、平和をもとめ、・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ この間うちから、ラジオはくりかえし、くりかえし、各政党立候補者の政見発表演説を送っております。うちにいて、働きながら、各政党の演説が開けるのは、まことに便利です。黙ってきいていると、政策が語られずに、詩吟をする候補者まで出て来ます。こ・・・ 宮本百合子 「幸福のために」
・・・の号外を発行し、ブルジョア選挙のバクロと階級的候補者支持、選挙をどう闘うべきかということのアジプロを行った。その号外がテーブルの上にひろげられている。自分は署名して、ソヴェト同盟の婦人と選挙活動のことを書いているのであった。清水は日本プロレ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 日本の人民そのもののうちに平和を守ろうとしている誠意を信じることができるからこそ、パリの世界の平和を守る会は、去年の大会で決定した国際平和賞の候補すいせんを、日本の「平和を守る会」支部にもとめて来ている。 国外に行っている日本・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・しんからの感興と情熱とを動かされる瞬間のうちには、何かの意味で今日の歴史の命がこもっているわけだが、例えば最近或る文学賞の候補に一つの小説がのぼって、多数の投票があったが、それは生々しいテーマで当選してもその雑誌に発表されないからというのが・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・作家には文化勲章が与えられず、日本歴史の研究その他で知られている徳富蘇峰氏等の名が候補者として噂にのぼっているのはどう言う訳であろうか。 ここに文学そのものの、特に小説というものの本質の問題が横わっていると思われるのである。文学の創作が・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・その候補者はどんな人間かと云うと、あらゆる不遇な人間だね。先年壮士になったような人間だね。」 茶を飲んで席を起つものがちらほらある。 木村は隠しから風炉鋪を出して、弁当の空箱を畳んで包んでいる。 犬塚は楊枝を使いながら木村に、「・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・田中、得能、紀平などの諸氏は、当時東京大学の哲学の講師の候補者であったらしい。西田先生はその八月の末に東京に移られたが、九月には井上、元良、上田などの諸氏としきりに接触していられる。そうして十月十日の日記には「午前井上先生を訪う。先生の日本・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫