・・・ンのような顔をして、爪の垢を一杯ためながら下宿の主婦である中年女と彼自身の理論から出たらしいある種の情事関係を作ったり、怪しげな喫茶店の女給から小銭をまきあげたり、友達にたかったりするばかりか、授業料値下げすべしというビラをまくことを以て、・・・ 織田作之助 「髪」
・・・工場や、農村に残っている同志や親爺には、工場主の賃銀の値下げがある。馘首がある。地主の小作料の引上げや、立入禁止、又も差押えがある。労働者は、働いても食うことが出来ない。働くにも働く仕事を奪われる。小作人は、折角、耕して作った稲を差押えられ・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・訓練ある英国労働組合はほとんど全線にわたって資本家国家のかくの如き要求を合理的と認め、現に賃銀値下げに協調しているではないか。この合理化を非合理化だと叫んでいるのは、英国人の商魂という特殊性を没却した第三インターナショナルの指令のままに誤っ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫