・・・私は、いやらしいくらいに小心な債務家のようなものであった。 私は私の家庭生活を、つぎつぎと破壊した。破壊しようとする強い意志が無くとも、おのずから、つぎつぎと崩壊した。私が昭和五年に弘前の高等学校を卒業して大学へはいり、東京に住むように・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・ 三五八頁には右の手を清浄な事に使い、左の手を汚れに使う種族の事がある。 これもある意味では世界中の文明人が今現にやっている習俗と同じ事である。 三五九頁にはこんな事がある。 債務者が負債を払わないで色々な口実を設けて始末の・・・ 寺田寅彦 「マルコポロから」
・・・戦時中アメリカが集積した債務はこの移動の一原因にすぎぬ。アメリカの莫大なる天然資源、素晴らしい国内消費、不断に展開しつつある繁栄。これらもまた考慮に入れなければならない。西欧の資本家は利潤と返還資金を待望している。英国がこれらを供給しなけれ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫