・・・そこへ僧侶に連れられてたった三人のさびしい葬式の一行が来る。このところにあまり新しくはないがちょっとした俳句の趣がある。 アンナ・ステンのナナが酒場でうるさく付きまとう酔っぱらいの青年士官を泉水に突き落とす場面にもやはり一種の俳諧がある・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・そういう時にいつでも結局いちばん得をするのは、こういう犠牲者の死屍にむちうつパリサイあたりの学者と僧侶たちかもしれない。こんな事を考えているうちに、それなら金もうけに熱中して義理を欠く人はどうかという問題にぶつかって少しむつかしくなって来た・・・ 寺田寅彦 「自画像」
・・・それから、何という表題の書物であったか、若い僧侶が古い壁画か何かの裸体画を見て春の目覚めを感じるという場面を非常にリアルな表現をもって話して聞かせた事があった。その時の病子規は私には非常に若々しく水々しい人のように感ぜられた。 私は『仰・・・ 寺田寅彦 「子規の追憶」
・・・出家僧侶、宗教家などには、一人位は逆徒の命乞する者があって宜いではないか。しかるに管下の末寺から逆徒が出たといっては、大狼狽で破門したり僧籍を剥いだり、恐れ入り奉るとは上書しても、御慈悲と一句書いたものがないとは、何という情ないことか。幸徳・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・まだ六ツか七ツの時分、芝の増上寺から移ってこの伝通院の住職になった老僧が、紫の紐をつけた長柄の駕籠に乗り、随喜の涙に咽ぶ群集の善男善女と幾多の僧侶の行列に送られて、あの門の下を潜って行った目覚しい光景に接した事があった。今や Dmocrat・・・ 永井荷風 「伝通院」
・・・先ず案内の僧侶に導かれるまま、手摺れた古い漆塗りの廻廊を過ぎ、階段を後にして拝殿の堅い畳の上に坐って、正面の奥遥には、金光燦爛たる神壇、近く前方の右と左には金地に唐獅子の壁画、四方の欄間には百種百様の花鳥と波浪の彫刻を望み、金箔の円柱に支え・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・千三百九十九年国民が三十三カ条の非を挙げてリチャード二世に譲位をせまったのはこの塔中である。僧侶、貴族、武士、法士の前に立って彼が天下に向って譲位を宣告したのはこの塔中である。その時譲りを受けたるヘンリーは起って十字を額と胸に画して云う「父・・・ 夏目漱石 「倫敦塔」
・・・ また、戦国の世にはすべて武人多くして、出家の僧侶にいたるまでも干戈を事としたるは、叡山・三井寺等の古史に徴して知るべし。社会の公議輿論、すなわち一世の気風は、よく仏門慈善の智識をして、殺人戦闘の悪業をなさしめたるものなり。右はいずれも・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・寺の僧侶が毎朝早起、経を誦し粗衣粗食して寒暑の苦しみをも憚らざれば、その事は直ちに世の利害に関係せざるも、本人の精神は、ただその艱苦に当たるのみを以て凡俗を目下に見下すの気位を生ずべし。天下の人皆財を貪るその中に居て独り寡慾なるが如き、詐偽・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・ 八名 三名 三名 一名 ― 二名 一七名無職 六名 四名 四名 一名 一名 四名 六名其他 一一名 一二名 三五名 ― ― 八名 二〇名僧侶 三名 ― 二名 ―・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
出典:青空文庫