・・・と称える僧衣らしい。そう云えば「こんたつ」と称える念珠も手頸を一巻き巻いた後、かすかに青珠を垂らしている。 堂内は勿論ひっそりしている。神父はいつまでも身動きをしない。 そこへ日本人の女が一人、静かに堂内へはいって来た。紋を染めた古・・・ 芥川竜之介 「おしの」
・・・ こんな空想にふけりながら自分は古来の日本画家の点呼をしているうちに、ひょっくり鳥羽僧正に逢着した。僧衣にたすき掛けの僧覚猷が映画監督となってメガフォンを持って懸命に彼の傑作の動物喜劇撮影をやっているであろうところの光景を想像してひとり・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・p.281○狂妄な帝国主義は驕傲を僧衣に包んで「神の御意なり」と叫ぶのである。○先ずもってわれわれヨーロッパの世界は、この新しい神の国、ロシアという世界国家の中で崩壊しなければならず、然るのち初めて救われるのである。文字通り彼は云っ・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
出典:青空文庫