・・・う女が出来た、自分は少々歪んでても、曲っててもいい、女房になってくれる女があれば、その女のために一所懸命やろうと思っていたが、到頭その機会が来た、自分は今までの世の中に一人ぼっちだという寂しさからつい僻みが出てやけも起したが、これからは例え・・・ 織田作之助 「世相」
・・・しかし腹の底にはこういう僻みを持っていても、人の好意に負くことは甚く心苦しく思っているのだ。これはこの源三が優しい性質の一角と云おうか、いやこれがこの源三の本来の美しい性質で、いかなる人をも頼むまいというようなのはかえって源三が性質の中のあ・・・ 幸田露伴 「雁坂越」
・・・然らずば何となく気が急いて、出て行けがしにされるような僻みが起って、どうしても長く腰を落ち付けている事が出来ない。 これに反して停車場内の待合所は、最も自由で最も居心地よく、聊かの気兼ねもいらない無類上等の Caf である。耳の遠い髪の・・・ 永井荷風 「銀座」
出典:青空文庫