・・・多くの宗教で肉食を禁ずることが大切の儀式にはつきものになっているのでもわかりましょう。戦争どこじゃない菜食はあなた方にも永遠の平和を齎してせっかく避暑に来ていながら自働車まで雇って変な宣伝をやったり大祭へ踏み込んで来ていやな事を云って婦人た・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・それですから、何かの儀式でネネムが式辞を読んだりするときは、その位を読むのがつらいので、それをあらかじめ三十に分けて置いて、三十人の部下に一ぺんにがやがやと読み上げて貰うようにしていましたが、それでさえやはり四分はかかりました。勲章だってそ・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・ 同じ死ということでも、藤村の死去ときいて、私たちには儀式めいた紋付羽織袴のそよぎが感じられた。秋声が遂に亡くなったときいたとき、私たちは、自分たちの生涯の終りにも来る人一人の終焉ということを沁々感じたのであった。 藤村の文豪として・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・教会で結婚の儀式をあげる機会をもてずに、愛しあっていた男女が結合し、親となったということだけのために、若い母親は周囲の人たちのしつこい侮蔑と中傷とにさらされなければならなくなった。父である牧師は、自分の教会と牧師である自身の体面が全教区の前・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・――つまり、まだお客で幾分儀式ばってる。そういう批評であった。 ロカフは益々真面目な活動の分野をひろげ、各地方に支部を組織した(ロカフの組織は、ラップとどの点でも対立したものではない。ラップに属する作家が、または全露農民作家協会。 ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 儀式はとどこおりなく済んだが、その間にただ一つの珍事が出来した。それは阿部権兵衛が殉死者遺族の一人として、席順によって妙解院殿の位牌の前に進んだとき、焼香をして退きしなに、脇差の小柄を抜き取って髻を押し切って、位牌の前に供えたことであ・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・秀麿は位階があるので、お父う様程忙しくはないが、幾分か儀式らしい事もしなくてはならない。新調させた礼服を著て、不精らしい顔をせずに、それを済ませた。「西洋のお正月はどんなだったえ」とお母あ様が問うと、秀麿は愛想好く笑う。「一向駄目ですね。学・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ はや下ななつさがりだろう、日は函根の山の端に近寄ッて儀式とおり茜色の光線を吐き始めると末野はすこしずつ薄樺の隈を加えて、遠山も、毒でも飲んだかだんだんと紫になり、原の果てには夕暮の蒸発気がしきりに逃水をこしらえている。ころは秋。そここ・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・ 私は偶像礼拝者の歓喜をさらに高調に達せしめる要素として、読経および儀式の内に含まれている音楽的および劇的影響をあげなければならぬ。 我々の祖先は今、適度の暗さを持った荘厳な殿堂の前に、神聖な偶像の美に打たれて頭を垂れている。や・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・最初は宗教的な儀式としての所作事にとって必要であった。その所作事が劇に転化するに従って登場する人物は複雑となり面もまた分化する。かかる面を最初に芸術的に仕上げたのはギリシア人であるが、しかしその面の伝統を持続し、それに優れた発展を与えたもの・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」
出典:青空文庫