・・・いわんやまた趣味には高下もあり優劣もあるから、優越の地に立ちたいという優勝慾も無論手伝うことであって、ここに茶事という孤独的でない会合的の興味ある事が存するにおいては、誰か茶讌を好まぬものがあろう。そしてまた誰か他人の所有に優るところの面白・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・しかも、ウール・シュタンドにせよ、ダス・ゲマイネにせよ、その優劣をいますぐここで審判するなど、もってのほかというべきであろう。人ありて、菊池寛氏のダス・ゲマイネのかなしさを真正面から見つめ、論ずる者なきを私はかなしく思っている。さもあらばあ・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・器械的技巧の点においてはほとんど問題にならないほどの距離があるが、もしこれを芸術的批判の立場から見れば必ずしも容易に両者の優劣を決定することはできないかもしれない。絵巻物では、一つの場面から次の場面への推移は観覧者の頭脳の中で各自のファンタ・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・ただそれらの間の優劣を区別する場合の目標は、著者の主観によって選まれた問題の構成のしかたとその解法の選択いかんによって決定されるのであって、この優劣判断の際には、また審判者の個性のいかんによって、必ずしも衆議一決というわけに行かない場合があ・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・としての個人性を科学の上に認めている。「見る器械」、「聞く器械」としての優劣の存在を許容するのもやむを得まい。高価な器械を持つ人と、粗製の器械をもつ人との相違と本質的に同じとも言われる。多くのすぐれた器械の結果が互いに一致し、そうしてその結・・・ 寺田寅彦 「感覚と科学」
・・・教育映画としての優劣はこの案内の仕方の優劣次第できまるのである。ここに色々の問題が起って来るのである。 動物の生活を見せる映画について考えてみる。例えば動物園へ子供を連れて行って子供に実際の河馬を見せるのと優秀な教育映画の河馬を見せるの・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・場合によっては数の大きいほどいいこともありまた場合によっては少ないほどすぐれていることもあるが、とにかく一線の上に連続的に配列された数量の尺度によって優劣をきめるのである。こうしなければ優劣は単義的に決定しない。従ってレコードは設定されず、・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・ これは顔だけから見た人猿優劣比較論であり、老若賢愚比較論である。 これに似た比較論が世間では普通に行われている。財産の多寡で個人の価値を秤量するのが一つ。皮膚の色で人種の等級をきめようとするのが一つ。試験の成績やメンタルテストで人・・・ 寺田寅彦 「猿の顔」
・・・ 詩人にも科学者にもそれぞれの型について無限に多様な優劣の段階がある。要は型の問題ではなくて、段階の問題だけであるらしい。 寺田寅彦 「詩と官能」
・・・そして最後に二者の優劣を批判するものがあれば、それは科学以外の世界に求めなければならない。 六 自然の森羅万象がただ四個の座標の幾何学にせんじつめられるという事はあまりに堪え難いさびしさであると嘆じる詩人があるか・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
出典:青空文庫