・・・体格からいったら獅子や虎よりも優秀だ。肉食でなければ営養が取れないナゾというのは愚論だよ。」 が、鴎外は非麦飯主義で、消化がイイという事は衛養分が少ないという事だという理由から固く米飯説を主張し、米の営養は肉以上だといっていた。 或・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・森鴎外でも志賀直哉でも芥川龍之介でも横光利一でも川端康成でも小林秀雄でも頭脳優秀な作家は、皆眼鏡を掛けていない。それに比べると、眼鏡を掛けた作家は云々。僕は眼鏡を掛けていない。だから云々と己惚れるのである。 そしてまた思うのである。森鴎・・・ 織田作之助 「僕の読書法」
・・・銃や、機関銃や、大砲に対抗するのに、弓や竹槍や、つぶてではかなわない、プロレタリアは、ブルジョアに負けない優秀な武器を自分のものとしなければならない。レーニンは次のように云っている。「武器を取扱い武器を所有することを学ぼうと努力しない被抑圧・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・その中、一人は、非常に勇敢に闘った優秀な将校でありました。と云います。」「うむ、そうだ、よろしッ!」その時の、自分の声が、朗らかにすき通って、いい響きを持っていたのを大隊長は満足に思った。 ――今持っている旭日章のほかに、彼は年金の・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・そこでの戦争の体験が、彼等の文学を優秀なものとしている。そして彼等は、そのイデオロギーに制約されながらも、体験を遠慮なく好きなように書き得る自由を持っていた。 わが明治以後、大正に到っては、既に芥川龍之介の「将軍」でさえ何行かを抹殺され・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・それから毘陵の唐太常凝菴が非常に懇望して、とうとう凝菴の手に入ったが、この凝菴という人は、地位もあり富力もある上に、博雅で、鑒識にも長け、勿論学問もあった人だったから、家には非常に多くの優秀な骨董を有していた。しかし孫氏旧蔵の白定窯鼎が来る・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・始めから終りまで「優秀場面」の連続で、そうして全体が、ぐんなりしている。「重慶から来た男」のほうは、これとは、まるで反対であった。およそ「芸術的」でない。優秀場面なんて一つもない。ひどく皆うろたえて走り廻っている。けれども私には、これが非常・・・ 太宰治 「芸術ぎらい」
・・・書いてみて、それが相手に受け入れられなかったら、もうどう仕様もないことですし、これから書こうと思っている小説を、どんなにパッションもって語っても、いまのところ私は、そんなに優秀の大傑作、書けないのが、わかっていますし、現在の私の作家としての・・・ 太宰治 「正直ノオト」
・・・これは、なかなか優秀の薔薇だ、と言うのだ。「ほんとうかね。」「そうらしい。これは、もう六年くらいは経っています。ばら新あたりでは、一本一円以上は取るね。」友人は、薔薇に就いては苦労して来たひとである。大久保の自宅の、狭い庭に、四、五・・・ 太宰治 「善蔵を思う」
・・・ごはんの知らせが来ても、私は、からだ工合が悪いから、きょうは起きない、とぶっきらぼうに言い、その日は局でも一ばんいそがしかったようで、最も優秀な働き手の私に寝込まれて実にみんな困った様子でしたが、私は終日うつらうつら眠っていました。伯父への・・・ 太宰治 「トカトントン」
出典:青空文庫