・・・ついでにもう一歩脱線すると、相撲の元祖と言われる野見宿禰の「スクネ」とよく似たヘブライ語の「ズケヌ」は「長老」の意味があるのである。 このヤコブと天使との相撲の話は、私にはまた子供の時分に郷里の高知でよく聞かされた怪談を思い出させる。・・・ 寺田寅彦 「相撲」
・・・ 世界じゅうの人間の元祖が一つであろうという事は単に確率論的の考察からもいちばん考えやすい事であるが、今ここで軽々しくそういう大問題に触れようとは思わない。ただ少なくも動物学上から見て同種な Homo Sapiens としての人間の世界・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・ デカルトといえば、合理主義的哲学の元祖である。しかし彼の『省察録』Meditationes などを読んでも、すぐ気附くことは、その考え方の直感的なことである。単に概念的論理的でない。直感的に訴えるものがあるのである。パスカルの語を・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・ざっといって見ると、明月谷に他から移り住んだ元祖である元記者の某氏、病弱な彫刻家である某氏、若いうちから独身で、囲碁の師匠をし、釈宗演の弟子のようなものであった某女史、決して魚を食わない土方の親方某、通称家鴨小屋の主人某、等々が、宇野浩二氏・・・ 宮本百合子 「この夏」
・・・文学の感覚が活々としているなら、流行の元祖のその小説が、日本の現代文学にどういう在りようをしているかということの理解から、その同じ字を使う気にはなれなそうである。学者らしく又先生らしい心持の勘には、今日のジャーナリズムの相当荒っぽい物音がそ・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・ふみ絵の元祖?一五六〇年頃p.72 新教と「家庭」。市民生活の単位として。勝手にされぬ砦として。 これは極めて大きいテーマである。イギリスにおいて、ミルトンの一夫一婦 純潔な家庭を称揚したパラダイス ロストフランスの人々・・・ 宮本百合子 「バルザック」
・・・こう云う風に本当を二つに見ることは、カントが元祖で、近頃プラグマチスムなんぞで、余程卑俗にして繰り返しているのも同じ事だ。これだけの事は一寸云って置かなくては、話が出来ないのだがね。」「宜しい。詞はどうでも好い。その位な事は僕にも分かっ・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・Artzibaschew は個人主義の元祖 Stirner を崇拝していて、革命家を主人公にした小説を多く出す。これも危険である。それに肺病で体が悪くなって、精神までが変調を来している。 フランスとベルジックとの文学で、Maupassa・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
出典:青空文庫