・・・「諸君、先週わたしの申し上げた所は御理解になったかと思いますから、今日は更に一歩進んだ『半肯定論法』のことを申し上げます。『半肯定論法』とは何かと申すと、これは読んで字の通り、或作品の芸術的価値を半ば肯定する論法であります。しかしその『・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・その後、失礼して居ります。先週の火曜日にそちらの様子見たく思い、船橋に出かけようと立ち上った処に君からの葉書来り、中止。一昨夜、突然、永野喜美代参り、君から絶交状送られたとか、その夜は遂に徹夜、ぼくも大変心配していた処、只今、永野よりの葉書・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ほかでもない、あなたに御入用の本のことについて裁判長にやっと明日面会できる始末だから。先週は祝日があって、一日おきのところがすっかり飛び、土曜日は、『文学評論』の用でだめでした。どうぞあしからず御察し下さい。 差入れの本は、いたって無秩・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・待っていず、書いて、出してしまいましょう。先週の火曜日には、いろいろのエハガキをなるたけ沢山御覧になったらと思い、わざと私の手紙は書かなかったから。―― お体はいかがでしょう。中川へ夜着のことで電話をかけたら、まだやっぱりそちらのおカユ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・事務所の粗末な郵便棚を、私共は一月に三四度見にくるのだが、先週もその前の週にもあった男名宛のハガキなどが今日迄も受けとられず、ざらついた棚の底にくっついているのを見ると、一種の心持を感じる。この水田達吉とたどたどしげな横文字で書かれた男はど・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・ 先ず火曜日は、先週の日曜の朝代えた下着や、敷布や襯衣その他の洗濯日、午後からは訪問と云う日割です。大きいものは一まとめに袋に入れて、朝来ることに定めてある洗濯屋に渡し、小さい手巾とか、婦人用の襟飾、絹のブラウズと云うようなものは、皆、・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・死傷何人。先週より何%増。「娯楽ドライヴは果して窃盗罪を構成せざるや」 ロンドンで自動車運転許可は郵便局へ五シリング払い込めば貰える。だが運転すべき自動車そのものはハロッズで売っている玩具でも五シリングよりは高い。 近代倫敦ボー・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫