・・・そう、そう、私共のス、あの宝石の光り輝く市の王様の、たった一人娘のスを! けれども、其那工合には行きません。それは出来ないことでした。真個にそれ等の事も出来ないと云うのではありませんが、スは、水の世界パタルプールの宮殿へ生れないで、バニカン・・・ 著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子 「唖娘スバー」
・・・賞品をもらうときシャツの袖がちらと出て、貝のボタンが三つも四つも、きらきら光り輝くように企てたのでした。家を出て、学校へ行く途々も、こっそり両腕を前方へ差し出し、賞品をもらう真似をして、シャツの袖が、あまり多くもなく、少くもなく、ちょうどい・・・ 太宰治 「おしゃれ童子」
・・・葉桜のころで、光り輝く青葉の陰で、どうどうと落ちている滝は、十八歳の私には夢のようであった。ふと、われに帰り、「ごはんを食べに来たのだ。」 いままで拭き掃除していたものらしく、箒持って、手拭いを、あねさん被りにしたままで、「どう・・・ 太宰治 「デカダン抗議」
・・・の幻覚のように、大きなクリスマストリーが、神秘的に光り輝く霧の中に高く浮かみ上がる。あらゆる過去へのあこがれと、未来への希望とがその樅の小枝の節々につるされた色さまざまの飾り物の中からのぞいているのである。寺々の鐘が鳴り渡ると爆竹がとどろい・・・ 寺田寅彦 「銀座アルプス」
・・・ 広場のはずれにこれもまた、光り輝く服装をした巡査が立っている。それに教わって、ちょっと横丁へそれたところにある喫茶店へ行った。ガラス越しに中で茶を飲んでいる人の姿はまるみえだ。それだのに、戸のとってを持って開けようとしても戸はあかない・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
・・・山川草木はことごとく浄光を発して光り輝く。そういったような気持ちを寺田さんは我々に伝えてくれるのである。こうしてあの小さい電車のなかの一時間は自分には実に楽しいものになった。 あの日は寺田さんは非常に元気であった。電車へ飛び込んで来られ・・・ 和辻哲郎 「寺田さんに最後に逢った時」
出典:青空文庫