・・・私のような兵役免除の丁種が、帝国軍人の妻たる者の心掛けを説こうというのは、どう考えたって少し無理ですよ。 あれの家の前で署長と無言で別れ、私はあれの家の土間にはいって行きました。あなたがこれまで東京に永くいらっしゃったと言っても、やはり・・・ 太宰治 「嘘」
・・・たとえば、五穀の豊饒を祈り、風水害の免除をいのり、疫病の流行のすみやかに消熄することを乞いのみまつったのである。かくして民族の安寧と幸福を保全することが為政者の最も重要な仕事の少なくも一部分であったのである。 この重要な仕事に連関して天・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ ついこの頃の雑誌で見ると、英国の気象局長ショー氏は軍事上に必要な顧問となるために同局の行政的事務を免除され、もっぱら戦争の方の問題に骨を折る事になったとある。これはむしろあまり遅きに過ぎると思われるが、いったい英国の流儀としては怪しむ・・・ 寺田寅彦 「戦争と気象学」
・・・一、集団農場に組織されて二年間は税を免除する。一、その後の税率は、集団農場の全収入を集団農場員の頭割にして、その額がその地方の個人経営の農民の平均収入より少なかった場合は免除。多かったら、個人経営の農民の払う税の三割から六割減の率で・・・ 宮本百合子 「今にわれらも」
・・・には十日間で免除された召集中の軍隊生活の経験がとりあげられている。この間までの数年間、日本じゅうの青年の恐怖や苦痛、忍耐の経験の一つの表現である。この題材がとりあげられたことはよかった。が、「町工場」の題材とちがって、国家の権力によって組織・・・ 宮本百合子 「小説と現実」
・・・そして検閲料免除になった。だが、あの小説を読んだ真面目な読者は、作者が告げようとしている「真実」の内容が具体的にはっきりしていないことに、苦痛を感じたのであった。青野氏が抒情的な筆致で「民衆の真実」をとりあげた場合、一般化していわれる民衆と・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・日曜大祭日は、その労役が免除された。そういう日に、重吉たちは、限られた本をよむことが出来た。そのかわりに、その日は食事の量が減らされた。本のよめる日は必ず空腹でなければならなかった。労役免除の日は食餌を減らして、囚人たちが休日をたのしみすぎ・・・ 宮本百合子 「風知草」
出典:青空文庫