・・・「出花を入れ替えてまいりました、さあどうぞ……」「あ、今おりて湖水のまわりを廻ってくる」「お二人でいらっしゃいますの……そりゃまあ」 女中は茶を注ぎながら、横目を働かして、おとよの容姿をみる。おとよは女中には目もくれず、甲斐・・・ 伊藤左千夫 「春の潮」
・・・てて心地よげに水を踏み、ほんに砂粒まで数えらるるようなと、海近く育ちて水に慣れたれば何のこわいこともなく沖の方へずんずんと乳の辺りまで出ずるを吉次は見て懐に入れし鼈甲の櫛二板紙に包んだままをそっと袂に入れ換えて手早く衣服を脱ぎ、そう沖へ出な・・・ 国木田独歩 「置土産」
・・・ 日本の時代物映画も、もうそろそろなんとか頭脳の入れ換えをしたらどうかと思う。 十四 食うか食われるか 亀と亀とが角力をとって負けたほうが仰向けに引っくり返される。引っくり返されたが最後もう永久に起き上がる事がで・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・まず明日からは心を入れ換えて勉強専門の事。こう決心して寝てしまう。 かかるありさまでこの薄暗い汚苦しい有名なカンバーウェルと云う貧乏町の隣町に昨年の末から今日までおったのである。おったのみならずこの先も留学期限のきれるまではここにおった・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・ 応仁の乱以後日本では支配層の入れ替えが行なわれた。それに伴なう社会的変動が、思想の上にも大きく影響したはずである。しかしそういう変動を問題とするためには、その変動の前の室町時代の文化というものが、一体どういうものであったかを、はっきり・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫