・・・月に三度の公休日にも映画ひとつ見ようとせず、お茶ひとつ飲みにも行かず、切り詰め切り詰めた一人暮しの中で、せっせと内職のミシンを踏み、急ぎの仕立の時には徹夜した。徹夜の朝には、誰よりも早く出勤した。 そして、自分はみすぼらしい服装に甘んじ・・・ 織田作之助 「旅への誘い」
・・・こんどは半分以上自分の金を出したというせいばかりでもなかったろうが、柳吉の身の入れ方は申分なかった。公休日というものも設けず、毎日せっせと精出したから、無駄費いもないままに、勢い溜まる一方だった。柳吉は毎日郵便局へ行った。体のえらい商売だか・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・こんどの公休には、きっと一緒にお礼にあがります」急に真面目な顔になって、「それじゃ、きょうは失礼いたします。お大事に」 それから、三日たって、私が仕事のことよりも、金銭のことで思い悩み、うちにじっとして居れなくて、竹のステッキ持って、海・・・ 太宰治 「黄金風景」
・・・「月に二度公休しるわ。」「どこへ遊びに行く。浅草だろう。大抵。」「そう。能く行くわ。だけれど、大抵近所の活動にするわ。同なじだもの。」「お前、家は北海道じゃないか。」「あら。どうして知ってなさる。小樽だ。」「それはわ・・・ 永井荷風 「寺じまの記」
・・・狐でもなく女給でもなく、公休日にでも外出した娼妓であったらしい。わたくしはどこで夕飯をととのえようかと考えながら市設の電車に乗った。 その後一年ほどたってから再び元八まんの祠を尋ねると、古い社殿はいつの間にか新しいものに建替えられ、夕闇・・・ 永井荷風 「元八まん」
・・・ ブルジョア地主の日本では普選と云っても女はのけもので、特別な投票所をこしらえ、しかも投票の日に労働大衆に公休はよこしません。 ソヴェトの選挙は、相当大きいところではみんな各工場の中で大衆的に行われます。つまり職場でやるのです。これ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
出典:青空文庫