・・・それほど、前から、たとえ主観的なものであるにもしろ政治家としてのトルーマンの確信がはっきりわかっていたのなら、日本の公器であるはずの日本の新聞が、どうして公平に記事を選ばず、デューイ当選を、まるで既定の至上事実のようにわたしたちに宣伝しなけ・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・この日ごろ日本の新聞としての公器性が失われていることを遺憾に思っている真面目な人々は、十一月三日のほとんどすべての新聞がデューイ氏当選確定とかき、デューイ氏断然勝たん、共和党早くも祝賀準備と、まるで丸の内へんで見てでも来たような記事をのせ、・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・支配者たちは、人民の公器たる政府の実力で、これらの大課題を、どのように公的に処置しつつあるだろうか。私たちの毎日の現実に立って答えるならば、政府は、愕くほど私的になっている。政府そのものの命脈を保つこと、その成員の姑息な差しかえ、G・H・Q・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・新聞週間がはじまったときの街頭録音で、発言した人々の圧倒的な希望は、新聞の公器性を自覚してほしいこと、正確な事実に立つ報道をしてもらいたいことだった。これは、全購読者の希望である。 新聞と異常で衝撃的なニュースとを結びつけて期待している・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・全体的に見て、今日の新聞そのものの性質が、明治初年の天下の公器としての自由性を失われているのであるから、現象的にニュースの断片を注ぎ込まれ、物価騰貴とその末葉のやりくりを知らされても、事象の本源までは新聞では迚も分らなくなって来ている。・・・ 宮本百合子 「女性の教養と新聞」
・・・人民の公器であるラジオの民主化がいわれているうちに、政府は全く官僚統制の放送事業法案を議会に上程した。これらの言論・出版の自由の抑圧にしても、きょうでは、出版の民主化とかラジオの自由な発展とかいう表現に便乗して行われようとしているのである。・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
出典:青空文庫