・・・ 父は苦笑して、「それじゃ、お前はどこだ。内股かね?」「お上品なお父さんですこと」「いや、何もお前、医学的な話じゃないか。上品も下品も無い」「私はね」 と母は少しまじめな顔になり、「この、お乳とお乳のあいだに、…・・・ 太宰治 「桜桃」
・・・その高い襠で擦れた内股にひびが切れて、風呂に入るとこれにひどくしみて痛むのもつらかった。 今はどうか知らないが昔の田舎の風として来客に食物を無理強いに強いるのが礼の厚いものとなっていたから、雑煮でももう喰べられないといってもなかなかゆる・・・ 寺田寅彦 「新年雑俎」
・・・いつも板裏草履をはいて、帯のはしをだらりとさげて、それにひどい内股なので、乞食のようにみえる。それをまた意識して相手にも自分にもわざとこすりつけてゆくようなところがあったが、「ボル」が入ってきてから一層ひどくなった。「ホホン、そりゃええ・・・ 徳永直 「白い道」
出典:青空文庫