・・・ が、インガとドミトリーとの間はまだ円滑に行っているとは云えない。 今日も、思いがけなく爆発したルイジョフの計略をインガは彼女独特のつよい統制力で整理したが、あとでドミトリーに云った。「――私はもうこのままじゃやって行けない! ・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ 自分たちでやっている以上、そういう人々が相談して、最も合理的な方法、村と都会との間の生活必需品の交換として、農村生産物と工業生産物との交流を、組織的に円滑にゆくようにしたらば、どうだろうかと考えてみる。すると、その一つが環となって、夥・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・このむきな人々が、僅か三四十年の間に、何と云う悧巧に、円滑になったことだろう。彼等が余り速に、賢く打算にぬけめなく立ち廻るようになったことは、私に浅くない、やや暗い感銘を与える。明治維新は斯うして考えて見ると、女学校で習ったのとは大分内容を・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・丸公の配給を円滑にして千八百円ベースでやってゆけば十一月には黒字が出る、という理論数字が政府からあんなにくりかえし示された。ところが、配給はそれで食べてゆかれないことはこれまでどおりで、丸公があがった。配給ですよ、と声をかけられてはっと財布・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
・・・いかに生きるべきかという問題の内容は非常に複雑であって、毎日は一応学生生活をやっていても、サラリーマン生活をやっていても、そういう謂わば外側の生活の順序だけ円滑に行っているだけでは、まだ本質的にこの問題が解決されきらない。そのことを、真面目・・・ 宮本百合子 「若き時代の道」
・・・漱石は、日本の社会にある結婚生活が、女を損い、そのことによって男の幸福もそこなわれていること、結婚生活の外面的な平和や円滑さに対する懐疑をつよくいいながら、それならば、と新しい生活の方向、結婚や恋愛の道をその作品の中で示し得なかったこともま・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・ 食糧問題が円滑に進まないために、もうこの頃から買出しということが始まった。配給で足りない部分を、女が近在の農家へ行って、藷だのその他の野菜を買込んで、自分達の背中で補って行くという仕事が始まった。一人の女性の生活を取ってみれば軍需生産・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫