・・・世界じゅうの重要不重要な出来事を短い時間に瞥見することによって世界が恐ろしく狭い空間に凝縮されて来る。そうして人類文化の進歩の急速な足音を聞いているような気もする。「ザンバ」のごとき自然描写を主題にしたものでも、おそらく映画製作者の意識・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・この時でも水蒸気が露のごとく水滴になるには何か塵のごとき微細ないわゆる凝縮核が必要であるし、ガラスの表面の性質によってつきかたにいろいろ異なった状態があったり、その他いろいろこの水に聯関した面白い問題があるのである。これらのことを全く考えな・・・ 寺田寅彦 「研究的態度の養成」
・・・この水滴が出来るためには、必ず何かその凝縮する時に取りつく核のようなものが必要であって、これがなければ温度が下がっても凝縮は起らない。従ってこの際出来る水滴の数を顕微鏡で数えれば、そのような凝縮核の数が分る勘定である。この器械で研究してみる・・・ 寺田寅彦 「塵埃と光」
・・・前者は集積し凝縮し電子となりプロトーンとなり、後者は一つにかたまり合って全能の神様になり天地の大道となった。そうして両者ともに人間の創作であり芸術である。流派がちがうだけである。 それゆえに化け物の歴史は人間文化の一面の・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・自動車のガソリンの煙だけでも霧の凝縮核を供給することはたいしたものであろう。寒い曇天無風の夜九段坂上から下町を見るといわゆるロンドンフォッグを思わせるものがある。これも市民のモーラルを支配しないわけにはゆかないであろう。 ・・・ 寺田寅彦 「LIBER STUDIORUM」
・・・ 雲の生成に凝縮心核を考えているのは卓見である。そして天外より飛来する粒子の考えなどは、現在の宇宙微塵や太陽からの放射粒子線を連想させる。 次に地震の問題に移って、地殻内部構造に論及するのは今も同じである。ただ彼は地下に空洞の存在を・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
出典:青空文庫