・・・愚図愚図していると今までのような煮え切らない事はして置かない、この村の巡査でまにあわなければ倶知安からでも頼んで処分するからそう思えともいった。仁右衛門は帳場に物をいわれると妙に向腹が立った。鼻をあかしてくれるから見ておれといい捨てて小屋に・・・ 有島武郎 「カインの末裔」
・・・ 私がこの農場を何とか処分するとのことは新聞にも出たから、諸君もどうすることかといろいろ考えておられたろうし、また先ごろは農場監督の吉川氏から、氏としての考えを述べられたはずだから、私の処分についての、だいたいの様子はわかっておられたか・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・「このことは何にも聴いて下さんな、自分が苦しんで、自分が処分をつけるつもりですから」「そうか」と、父は僕の何にも言わない決心を見て取ったのだろう、「じゃア、もう、きょうは遅いから帰る。あす、早速うちまで来てもらいたい」 こう言って、・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・役場では、その決闘というものが正当な決闘であったなら、女房の受ける処分は禁獄に過ぎぬから、別に名誉を損ずるものではないと、説明して聞かせたけれど、女房は飽くまで留めて置いて貰おうとした。 女房は自分の名誉を保存しようとは思っておらぬらし・・・ 著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外 「女の決闘」
・・・なおそれが教師に知れて一週間の停学処分になった。 同級生に憎まれながらやがて四年生の冬、京都高等学校の入学試験を受けて、苦もなく合格した。憎まれていただけの自尊心の満足はあった。けれども、高等学校へはいって将来どうしようという目的も・・・ 織田作之助 「雨」
・・・ 生まれつき肌が白いし、自分から言うのはおかしいが、まア美少年の方だったので、中学生の頃から誘惑が多くて、十七の歳女専の生徒から口説かれて、とうとうその生徒を妊娠させたので、学校は放校処分になり、家からも勘当された。木賃宿を泊り歩いてい・・・ 織田作之助 「競馬」
・・・ そんなことがあってみれば、その夜、ことに自作が発売禁止処分を受けて、もう当分自分の好きな大阪の庶民の生活や町の風俗は描けなくなったことで気が滅入り、すっかりうらぶれた隙だらけの気持になっている夜、「ダイス」のマダムに会うのはますます危・・・ 織田作之助 「世相」
・・・如何なる処分を受けても苦しくないと云う貴方の証書通り、私の方では直ぐにも実行しますから」 何一つ道具らしい道具の無い殺風景な室の中をじろ/\気味悪るく視廻しながら、三百は斯う呶鳴り続けた。彼は、「まあ/\、それでは十日の晩には屹度引払う・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・六 第二の破産状態に陥って、一日一日と惨めな空足掻きを続けていた惣治が、どう言って説きつけたものか、叔父から千円ばかしの価額の掛物類を借りだしたから、上京して処分してくれという手紙のあったのはもう十月も中旬過ぎであった。ちょ・・・ 葛西善蔵 「贋物」
・・・硫酸に侵されているような気持の底で、そんなことをこの番頭に聞かしたらというような苦笑も感じながら、彼もやはり番頭のような無関心を顔に装って一通りそれと一緒に処分されたものを聞くと、彼はその店を出た。 一匹の痩せ衰えた犬が、霜解けの路ばた・・・ 梶井基次郎 「冬の日」
出典:青空文庫