・・・だがそれを内密にすましてその男は処罰されることからは免れた。しかし、その代りとして、四年兵になるまで残しておかれるだろうとは、自他ともに覚悟をしていた。 だが、その男も、帰還者の一人として、はっきり記されてあった。 そして、残される・・・ 黒島伝治 「雪のシベリア」
・・・今に主謀者は処罰するぞ。」 生徒たちはくるくるはねまわってその草わなをみんなほどいて居りました。 私は向うに、七尺ばかりの高さのきれいな野ばらの垣根を見ました。垣根の長さは十二間はたしかにあったでしょう。そのまん中に入り口があって、・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・近き将来、各国から委員が集って充分商議の上厳重に処罰されるのはわかり切ったことである。又この事実は、ビジテリアンたちの主張が、畢竟自家撞着に終ることを示す。則ちビジテリアンは動物を愛するが故に動物を食べないのであろう。何が故にその為に食物を・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・その無能力者を、刑法では、そう認めず、処罰にあたっては、忽ち同一の主婦が能力者として扱われるという矛盾は、残酷という以上ではないだろうか。日本の民法はしっかりと改正されなければならない。 内縁関係、未亡人の生きかたに絡む様々の苦しい絆は・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・ 全く不幸な災難としかいいようのないこの事件が、先ず法律的処罰の対象となり得るということに一驚したのは、私だけではなかったろう。検事という職務の官吏が、みんな自家用自動車で通勤してはいない。弁当の足りないことを心のうちに歎じつつ、彼等も・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・ 食物の問題を、この社会にとっての公の問題としてとりあげれば、処罰されかねなかった習慣の中で、物が無くなったからと云って、どうして急に、その解決だけを、公の方法に立ち、社会全体の規模から、解決してゆこうという気持になれるでしょう。本・・・ 宮本百合子 「公のことと私のこと」
・・・勝てば得する式にうけとられていることが、日本の資本主義権力にとって、どんなに便利であったかということは、日本の権力が明治二十八年以来行ったそれぞれの戦争にあたって、すべての戦争反対、平和運動を禁止し、処罰してきたことでよくわかる。明治初期の・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ ラジオ屋と警官とが一組ずつとなって、東京各区をめぐり、ひとの家に急に入って来て短波受信機の設備の有無を調べ、もしあればそれを没収したり、処罰したりしたのは、いつのことであったろう。二年ほど前の初夏の頃であったと覚えている。 没収し・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
・・・日本が戦争侵略責任国として国際的処罰を受けるのは避け難いことである。それというのは、第一次ヨーロッパ大戦において、日本の財閥と軍閥とは儲けこそしたが痛手というような痛切な経験は一つもしていない。折を見て、連合国側にちょいと参加して、南洋の旧・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・そう云う妻の行為に対する処罰の方法は! それは空を見ることだ。空を見ると、夜なれば星と月。星と月とを見ていれば、総てが夢だと思うだろう。空は無いもの。夢は空と同じ質のものに相違ない。 夢の定義 生理学の夢の定義は、夢と・・・ 横光利一 「夢もろもろ」
出典:青空文庫