・・・それで空の光を適当な偏光器で検査すれば、空の部分によって偏光の度や偏光面の方向が規則正しく分布されている事が分る。この偏光の度や配置を種々の天候の時に観測して見ると、それが空気の溷濁を起すようないわゆる塵埃の多少によって系統的に変化する事が・・・ 寺田寅彦 「塵埃と光」
・・・なかんずく本邦学者の多年の熱心な研究のおかげで颱風の構造に関する知識、例えば颱風圏内における気圧、気温、風速、降雨等の空間的時間的分布等についてはなかなか詳しく調べ上げられているのであるが、肝心の颱風の成因についてはまだ何らの定説がないくら・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・で読めばただ一目で土地の高低起伏、斜面の緩急等が明白な心像となって出現するのみならず、大小道路の連絡、山の木立ちの模様、耕地の分布や種類の概念までも得られる。 自分は汽車旅行をするときはいつでも二十万分一と五万分一との沿線地図を用意して・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・今言う通り天下に職業の種類が何百種何千種あるか分らないくらい分布配列されているにかかわらず、どこへでも融通が利くべきはずの秀才が懸命に馳け廻っているにもかかわらず、自分の生命を託すべき職業がなかなか無い。三箇月も四箇月も遊んでいる人があるの・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・支那の儒者も孔孟の道を尊び、日本の儒者も孔孟の書を読み、双方ともにその教の源を同じゅうして、その社会に分布したる結果において、まったく相反するは、偶然に非ずして何ぞや。けだし、支那の儒教は敵なきがゆえに、その惑溺をたくましゅうし、日本の・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・昭和四年においてさえ男工一〇〇に対して女工の数は一一五・七を示し、大部分が繊維工業に分布されている。これは、日本が近代工業国として持っている歴史的な独特性である。故細井和喜蔵氏によって著わされた「女工哀史」はそういう特性をもった日本の若い無・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・一九一四年度ロシアの中学校、実務学校、予備学校における学生の出身階級の分布 世襲貴族の子弟 六・三 貴族及高官 一八・四 宗教家 四・八 紳士及紳商 九・六 商人、組合の親方 三二・一・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・民族の分布、社会の発生、習俗の伝承、あらゆる科学・芸術はどんなにして生まれて来たのだろうか。それ等の問いに答えるのは世界文化史である。 私たちは西洋史も東洋史も国史も習って来たわけであった。けれども、今より進歩した欲求で人類の文化の跡を・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・ 日本全国のラジオ聴取加入分布図というのを見ると、地方の経済事情がどれほど文化に影響しているかが瞭然としていて、心に迫って来るものがある。東京、大阪が最も密度濃いのは当然として、百世帯加入数辛うじて六以下という、ブランクによって示されて・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・そういう若い女は、現代社会の富の分布の関係から、当然、自分よりずっと年長の男を良人とし、やがて良人は良人として、妻は妻としてそれぞれの形の裏切りを重ねてゆくわけである。 地道な若い下級サラリーマンや、職業婦人の間に、今日はこんな世の中だ・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫