・・・井上眼科病院で診察してもらったら、一、二箇月入院して見なければ、直るか直らないかを判定しにくいと言ったとか。 かの女は黒い眼鏡を填めた。 僕は女優問題については何も言わなかった。 十二、三歳の女の子がそとから帰って来て、「姉・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・というものがわからないのかも知れない。山岸さんの「いいほうだ」という判定を聞いて、私は三田君のその後の詩を、いちど読んでみたいと思った。三田君も山岸さんに教えられて、或いは、ぐんぐん上達したのかも知れないと思った。 けれども、私がまだ三・・・ 太宰治 「散華」
・・・そうして十五回の終りに判定者がロスの方に勝利を授けたが、この判定に疑問があるというので場内が大混乱に陥ったということである。自分は拳闘のことは何も知らないが、しかしこの判定がやはり少し変に思われた。 ロスの方は体躯も動作も曲線的弾性的で・・・ 寺田寅彦 「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」
・・・ 第十一回目のラウンドで、審判者はTKOの判定を下してベーアの勝利となったが、素人がこの映画を見ただけでは、どちらもまだ何度でも戦えそうに見え、最後に気絶して起きられなくなるようなところはこの映画では見られなかった。 とにかく体力と・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・もちろんその省略が妥当であったかどうかを、最後にもう一度吟味しある程度まで実証的に判定し得られる場合もあるが、必ずしもそうでない場合がはなはだ多いのである。 この自然現象の表示としての微分方程式の本質とその役目とをこういうふうに考えてみ・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・それから一歩を進むれば、震源地の判定というような問題に触れる事にはなるが、更にもう一歩を進めるところまで行く暇のないのが通例である。この専門にとっては、地震というものと地震計の記象とはほとんど同意義である。ある外国の新聞に今回の地震の地震計・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・寒暖計の示度によらないで冷温を言う場合にはその人によってまるでちがった判定を下す事になる。これでは普遍的の事実というものは成り立たぬ。また甲乙二物体の温度の差でも触覚で区別できる差は寒暖計で区別できる差よりははるかに大きい。次に物体の重量の・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・林檎のように種類の多いものは皮の色を見て味を判定することが出来ぬが、ただ緑色の交っている林檎は酸いという事だけはたしかだ。梨は皮の色の茶色がかっている方が甘味が多くて、やや青みを帯びている方は汁が多く酸味が多い。皮の斑点の大きなのはきめの荒・・・ 正岡子規 「くだもの」
・・・やはりその人々は親子関係における基本的人権についての理解は古いままで、親の方だけ切離して社会問題に取上げて判定されたような分裂が起ってきやしないか。つまりこういうような殺人事件、詐欺とか強盗、そういう事件では社会の責任を指摘するでしょう。し・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・人間の思想と行動とが、ほんとうに非合法であるといえるのは、それが健全な人間の理性の判定する合理性に反したときだけである。一人の将軍が戦争の時流に乗じたあまり、諸君は地球の引力を否定した武器を発明すべきである、と呼号したりした場合、その言動は・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
出典:青空文庫