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・・・「別儀でもございませんが、その御手許にございまする御煙管を、手前、拝領致しとうございまする。」 斉広は思わず手にしていた煙管を見た。その視線が、煙管へ落ちたのと、河内山が追いかけるように、語を次いだのとが、ほとんど同時である。「・・・
芥川竜之介
「煙管」
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・・・で、禁厭とは別儀でない。――その紫玉が手にした白金の釵を、歯のうろへ挿入て欲しいのだと言う。「太夫様お手ずから。……竜と蛞蝓ほど違いましても、生あるうちは私じゃとて、芸人の端くれ。太夫様の御光明に照らされますだけでも、この疚痛は忘られま・・・
泉鏡花
「伯爵の釵」