・・・しかしアインシュタインは就学の自由を極端まで主張する方で、聴講資格のせせこましい制定を撤廃したいという意見らしい。演習なり実習なりである講義を理解する下地の出来たものは自由に入れてやって、普通学の素養などは強要しない。ことに彼の経験では有為・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ 実際には、監督の人によっては、かなりにルースな方法による人はあるであろうが、原則としてはともかくも上記のごとき有機的に制定された道筋を通らなければ一編の有機的な映画はできるはずはないのである。いわゆる「カフスに書いた覚え書き」によって・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・浮世絵の相場が西洋人の顧客によって制定されると一般である。また日本人の独創的な科学的研究でも、西洋人が一度きわめをつけないと、学位さえもらえないことがあるのとも一般である。 モンタージュはすなわちモンテーであり、マウンティングであり、日・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・はメートル制の採用と振り子の使用との結合から生まれた偶然の産物であるが、このだいたいの大いさの次序を制定したものはやはり人体の週期であるという事はほとんどたしからしく自分には思われる。 さて、われわれは時の長さをこの秒で測ると同時に、ま・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・もちろん、数学の公理や論理はきわめて簡単明瞭であり、使用される概念も明確に制定されているに反して、言語による思考の場合では、これらのすべてのものが複雑に多義的であるから、一見同様な前提から多種多様な結論が生まれ出るように見える。しかし実際の・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・それで連歌以来季題が制定されてそれが俳諧に墨守されて来た事は決して偶然ではないのである。たとえばフランス人ジュリアン・ヴォカンスが大戦の塹壕生活を歌った、七、七、七シラブルの「ハイカイ」には全く季題がないので、どうひいき目に見てもわれわれに・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・裏十二の中に月と花が一つずつあってこの一楽章に複雑な美しさを与える一方ではまたあまりに放恣な運動をしないような規律を制定している。月が七句目のへんに来ているのは、表の月に照応してもう一度同じテーマを繰り返すことによって表の気分を継承した形で・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
中学には中学の課目があり、高等学校には高等学校の課目があって、これを修了せねば卒業の資格はないとしてある。その課目の数やその按排の順は皆文部省が制定するのだから各担任の教師は委託をうけたる学問をその時間の範囲内において出来・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・されどこれ畢竟不具である畸形である、食物のみ厳格なるも釈迦の制定したる他の律法に一も従っていない。特にビジテリアン諸氏よくこれを銘記せよ。釈迦はその晩年、その思想いよいよ円熟するに従て全く菜食主義者ではなかったようである。見よ、釈迦は最後に・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・老藤村が、文化勲章の制定に感激しつつ、いまだ文学が一般の人、特に政治家に分っていないこと、そのためにこのよろこびが些かほがらかならざることに遺憾の心をのべているのは味わうべきところであった。文化勲章は従軍徽章でないのである。藤村が、文学者の・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
出典:青空文庫