・・・ この映画と比較してみると、前条に引き合いに出した「模倣の人生」のほうではいわゆる主演者はあっても「黒鯨亭」のごとき意味での独裁的主役は無い、むしろいろいろな個性の配合そのもののほうに観客のおもなる興味がつながれているように思われる。そ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・こういうふうに見ると、すでに前条に述べたような「人生の記録と予言」という意味での芸術としての文学の真諦に触れるものは、むしろ前者よりも後者のほうに多いということになりはしないかと思われる。そうして後者のほうは、同時にまた科学に接近する、とい・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 現在の意味での科学は存在しなかったとしても祖先から日本人の日常における自然との交渉は今の科学の目から見ても非常に合理的なものであるという事は、たとえば日本人の衣食住について前条で例示したようなものである。その合理性を「発見」し「証明」・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・そうして前条に詳説したようにたださまざまの景象や情緒の変転して行く間に生まれ来る「旋律」と「和声」とを聞かされるのである。従ってこの間に錯雑して現われて来るいろいろな作者のそれぞれちがった個性はなんらの破綻を生じないのみか、かえってちょうど・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・一、右の条々は、人生欠くべからざる学問なり。あるいは、学問というほどのこともあるまじ、人たる者の心得といいて可ならんか。この心得ありて後に、士農工商、おのおのその志すところの学を勤むべし。一、前条の外に、化学、天文学等、種々の科目あ・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ 余輩の所見をもって、旧中津藩の沿革を求め、殊に三十年来、余が目撃と記憶に存する事情の変化を察すれば、その大略、前条のごとくにして、たとい僥倖にもせよ、または明に原因あるにもせよ、今日旧藩士族の間に苦情争論の痕跡を見ざるは事実において明・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・ 今前条に示したる家内に返りてこれを論ぜん。この家内の有様は外を以て内を制し、公を以て私を束縛するものなり。主人の常言に家内安全を主とし質素正直を旨とするはすこぶる有力なる教えにして、然もこの教えは、世間道徳の門においても常に喋々して人・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・ 前条の如く、毎半年各戸に一歩の金を出ださしむるは官の命なれども、この金を用るにいたりては、その権まったく年寄の手にあり。この法はウェーランド氏経済書中の説に暗合せるものなり。 小学生徒の数、毎校少なきものは七十人より百人、多きもの・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・一 前条は学問と言う可き程のことにあらず、貴賤貧富に論なく女子教育の通則として、扨学問の教育に至りては女子も男子も相違あることなし。第一物理学を土台にして夫れより諸科専門の研究に及ぶ可し。之を喩えば日本の食物は米飯を本にし、西洋諸国はパ・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ 五、家庭の主人としての漱石 前条の通りの次第だから、その家庭をも知らない。 六、党派的野心ありや 党派という程のものがあるかどうだか知らない。前に云った草平君の間柄だけなら、党派などと大袈裟に云うべ・・・ 森鴎外 「夏目漱石論」
出典:青空文庫