・・・しかしいわゆる光の現象やまた前述のまじないの意味は全くこれでは説明されない。 これに反して、ギバがなんらかの空中放電によるものと考えると、たてがみが立ち上がったり、光の線条が見えたり、玉虫色の光が馬の首を包んだりする事が、全部生きた科学・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・ ダーウィンが彼の進化論をまとめ上げて、それが一般に持てはやされた時代には、おそらくダーウィンに対して前述の粘土供給者と同様の怨恨をいだき、ダーウィンを盗賊呼ばわりしたものが三人や五人は必ずあったであろうと想像される。これほど大きな仕事・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・の紹介を頼まれて、さて何か書こうとするときに、第一に思い出すのはこの前述の不思議な印象である。従って眼前の「妖魔詩話」が私に呼びかける呼び声もまたやはりこの漠然とした不思議な印象の霧の中から響いてくるのは自然の宿命である。 八雲氏の夫人・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・ またこれらは子音転換によれば前述のkhrの群になるのである。 冠の「イソ」というのは俚言集覧には「額より頭上をおおう所を言う」とあるが、シンハリース語の isa は頭である。ハンガリアでは esz がそうである。もっとも「イソ」は・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・そういう見地から見ると大地震が来たらつぶれるにきまっているような学校や工場の屋根の下におおぜいの人の子を集団させている当事者は言わば前述の箱根つり橋墜落事件の責任者と親類どうしになって来るのである。ちょっと考えるとある地方で大地震が数年以内・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ 地震の科学的研究に従事する学者でも前述のような自己本位の概念をもっていることは勿論であるが、専門の科学上の立場から見た地震の概念は自ずからこれと異なったものでなければならない。 もし現在の物質科学が発達の極に達して、あらゆる分派の・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・その場合に前述の甲型の人間が多いと、階段や非常口が一時に押し寄せる人波のために閉塞して、大量的殺人現象が発生するのである。 しかし、また一方、この同じ心理がたとえば戦時における祖国愛と敵愾心とによって善導されればそれによって国難を救い戦・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・もかくも一般政治から独立した恒久的観測研究の系統が永い以前から確定されており、その上に当代の有名な学者の数々を聚めているのであるから、この際思い切って気象台の観測事業の範囲を徹底的に拡張して、そうして前述のごときあらゆる天災の根本的研究とそ・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・の遊びが前述の「神鳴り」とそっくり同じようである。 先ずはじめに銘々の持ちものを何か一つずつ担保 gage として提供させる。それから一人「船長」がきめられる。次にテーブルを囲んだ人々の環を伝わって卓の下でこそこそと品物が廻される。口々・・・ 寺田寅彦 「追憶の冬夜」
・・・従って次の停留所でその遅刻のためによけいに収容しなければならない前述の nb の数を増加させる。その結果はさらに循環的に、その次の停留所に着く時刻を遅らせる、and so on で、この乙電車の混雑はだんだんに増すばかりである。最も簡単な理・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
出典:青空文庫