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・・・僕は力みかえって帽子をうんと掴みました。帽子が「痛い」といいました。その拍子に帽子が天の釘から外れでもしたのか僕は帽子を掴んだまま、まっさかさまに下の方へと落ちはじめました。どこまでもどこまでも。もう草原に足がつきそうだと思うのに、そんなこ・・・
有島武郎
「僕の帽子のお話」
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・・・昔プロレタリア文学の初期、勤労者の文学といえば、精力あまった荒削り、俺ら働くもの式の力み、ある低さくらさがつきものでした。推薦者徳永さんの前書に、「私は二十年前の若い労働者作家として感慨をもって思いくらべながら、現代の青年労働者作家を読者の・・・
宮本百合子
「一九四六年の文壇」