・・・ 牛女は、大女で、力も、またほかの人たちよりは、幾倍もありましたうえに、性質が、やさしくあったから、人々は、牛女に力仕事を頼みました。たきぎをしょったり、石を運んだり、また、荷物をかつがしたり、いろいろのことを頼みました。牛女は、よく働・・・ 小川未明 「牛女」
・・・、からだ工合が悪いと言って寝たり起きたり、そのくせ口だけは達者で、何だかんだとうるさく私たちに口こごとを言い、そうしてただ口で言うばかりでご自分はちっとも家の事に手助けしてくれないので、お嫂さんは男の力仕事までしなければならず、とても気の毒・・・ 太宰治 「雪の夜の話」
ここに一枚のスケッチがある。のどもとのつまった貧しい服装をした中年の女がドアの前に佇み、永年の力仕事で節の大きく高くなった手で、そのドアをノックしている。貧しさの中でも慎しみぶかく小ざっぱりとかき上げられて、かたく巻きつけ・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 力仕事をするひとたちは、この頃五度ぐらい食べないとやれないそうだ。仲仕がトラックにのる仕事だと大変よろこぶという実際の例がある。トラックに乗っている間はともかく腹が空かないから。 おなかが空いたときの顔は誰しも些か険相で、男のひと・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
出典:青空文庫