・・・この場合、吾々の力点は主として、軍国主義の実質の曝露にある。つまり、反軍国主義文学にあるのだ。 三 平時に於ては、主として反軍国主義文学に力点を置く、ということを述べたが、しかし、勿論、それに限ったことではない。ど・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・自然に生活の中にあるが儘に演出することがチェホフの劇作の力点であった。――ラネフスカヤは成功した。 ロパーヒンの成功も私は同じ理由だと思う。彼はラネフスカヤと玉突好きのあまりに紳士的な兄とに、桜の園を別荘地に開放することを頻りにすすめる・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・この場合、一般人間性の解放というところに力点をおいたり、男女平等というところにだけ力点をおくものとすれば、幾等かのナイーヴであろう。じゃじゃ馬は甘やかしと媚びと屈伏では、決して馴らせるものではない――条理に立つ分別に立ちもどらせられないもの・・・ 宮本百合子 「デスデモーナのハンカチーフ」
・・・文学において同じく人間性を主張するに当っても、そこに様々の力点の相違があったことは、世界の文学史の数頁をよんだものの理解しているところである。 今日、日本の大衆のおかれている現実の事情に立って、民衆の文学をとなえる作家によって人間性のど・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・笑いは決して諷刺にまでたかまっていなかったし、演出者の力点も、アテナの主権とそのしきたりに反抗する若い二組という面で強調されていた。つっこんで云えば、そういう政治権力に抵抗したあの時代の若い人々の自然発生の自覚は、同時にあんな魔法でひっぱり・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
出典:青空文庫