・・・明治の言語体文章に就ての美妙齋君の功績は十二分に之を認めなければならぬのでありますが、二葉亭主人の「浮雲」が与えた左様いう感じも必ずしも小さい働ではないと思います。文章発達史の上から云えば矢張り顧視せねばならぬ事実だと思います。 それは・・・ 幸田露伴 「言語体の文章と浮雲」
・・・気球に乗って一万メートルの高さにのぼって目をまわしておりて来たというだけの人と、九千メートルまでのぼってそうして精細な観測を遂げて来た人とでは科学的の功績から採点すればどちらが優勝者であるか、これは問題にもならない。 レコードは上述のご・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・ 今年物理学上の功績によってノーベル賞をもらったインド人ラマンの経歴については自分はあまり確かな事を知らないが、人の話によると、インドの大学を卒業してから衣食のために銀行員の下っぱかなんかを勤めながら、楽しみにケンブリッジのマセマチカル・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・これだけの功績はどう考えても否む事はできないと思う。たとえ彼の理論の運命が今後どうあろうとも、これだけは確かな事である。そこに彼の頭脳の偉大さを認めぬわけには行くまいと思う。 ナポレオンが運命の夕べに南大西洋の孤島にさびしく終わってもそ・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
木村項の発見者木村博士の名は驚くべき速力を以て旬日を出ないうちに日本全国に広がった。博士の功績を表彰した学士会院とその表彰をあくまで緊張して報道する事を忘れなかった都下の各新聞は、久しぶりにといわんよりはむしろ初めて、純粋・・・ 夏目漱石 「学者と名誉」
・・・下岡蓮杖の功績が新しく人々の科学常識の間にとりいれられたのは結構であったし、カメラを愛好する若い人々にとって、ターキーの舞台姿のポーズをとられたのも、鎌倉の波うちぎわで舞う女の躍動をうつせたのも、楽しいことの一つであったにちがいない。 ・・・ 宮本百合子 「カメラの焦点」
・・・の大衆は、今度は臨時政府を投げ倒し、プロレタリア階級の党、ロシア共産党と力を揃えて「十月」を遂行したのだ。 一九一七―二一年の困難な国内戦の期間、農民がうけもった革命的役割は「赤のパルチザン」の功績にハッキリと現れている。 ソヴェト・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ この文学運動が日本文学にもたらした消えざる功績は、文学作品の社会性についての見解と、文学を大衆にとって、買って読まされていたものから、自分たちの生活から生み得るものという理解に立ち到らせたこと、及び過去の所謂教養というものを身につけて・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
・・・この自然主義の試みは健康な一面の功績を残したが、今日では常識のうちの理性が成長しているから、自然現象と人間の社会現象の質のちがい、そこに関係して行く人間の意味の相異もはっきり区別されて理解されている。 従ってどのような作家が、どのような・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・薄色の髪の毛を簡単な断髪にして、黒っぽい上衣の胸に、彼女の功績を語る勲章がさげられている。衿もとには、昔のソヴェトに決して見られなかった美しいレースの衿がのぞいている。オルガ・ベルホルツの写真の中の顔は、私たちを感動させる表情をたたえている・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
出典:青空文庫