・・・グループはそれぞれに別個だし、編輯方針の細部でもそれぞれのある独自性を発揮しつつ、たとえば『文学評論』はすでに第二巻に進み、綜合的な文化雑誌『文化集団』はこの一月第三巻第一号までを発行し、各々意義深い功績をあげている。 このことからある・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ 一八六一年に書かれたこの『母権論』の功績は、著者バッハオーフェンが自身の神秘的な観念に制約されつつも、熱心にギリシア、ローマ等の古典文学を跋渉し、章句を引用し、彼以前には、全く空白に等しかった先史の分野に、一夫一婦制以前の社会が単に無・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・同志小林の功績は、実にプロレタリア文学運動におけるその如き党派性、その如き科学性の確立のために、決議の作成へまで発展的にしかも飽くまで厳密にわれわれを批判し、鼓舞激励したところにこそあるのである。 貴司は『改造』四月号の「人及び作家とし・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・―― ――そりゃ数のなかだもの、つまらないんだって、ばからしいのだってあるさ。功績ある共産党の中にだって一人一人見ればいやな奴がいるのと同じこった。 だがね。つまらない、下らないというのもいろいろだよ。芸術的な技術が下手で、捕えた・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ この興味ある赤軍の国際的功績を、どの作家が書いているか? 一人も書いていない。映画があるだけだ。また前線を訪問した工場からの慰問隊の、断片的な手記しかなかった。ソヴェトの作家たちは、赤軍、赤色艦隊の軍事活動にうとかったと同様に、更によ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・なかなか十五六の男の子としては大出来の功績をあげた。 二日 事ム所まで行って見ると、三崎町辺、呉服橋ぎわ、その他に人間の死体がつみかさね、やけのこりのトタン板をかぶせてある。なるたけ見ないようにして行く。二人の老婆をどうして逃そうか・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・それは当然あること、並に作家活動と社会への功績の理解との融合を除村氏は答えとして与えられている。私がソ連の作家生活の幾分を見聞したのは第一次五ヵ年計画以前のことであった。その頃でさえ、全露作家協会の共同金庫は、生活に余裕ない作家の生活援助の・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・ 長十郎はまだ弱輩で何一つきわだった功績もなかったが、忠利は始終目をかけて側近く使っていた。酒が好きで、別人なら無礼のお咎めもありそうな失錯をしたことがあるのに、忠利は「あれは長十郎がしたのではない、酒がしたのじゃ」と言って笑っていた。・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・そうして初めは、彼らの武力による治安維持の努力が実際に目に見える功績であった。しかし後にはただ特権階級として、伝統の特権によって民衆の上に立っていたのである。しかし民衆運動が勃興して後には、由緒の代わりに実力が物をいうようになった。単なる家・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・そうして彼の永い間の努力と苦心と功績とを一切看過した。私はそこに自分の愛の狭さを感じる。この種の心持ちがしばしば他人の製作に対して起こっているのではないかと、自分を憂えないではいられない。愛なき批評を呪うようになった私には、もはや気軽に他人・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫