・・・だから僕は君の作品に於て作品からマンの加減乗除を考えません。自信を持つということは空中楼閣を築く如く愉快ではありませんか。ただそのために君は筆の先をとぎ僕はハサミを使い、そのときいささかの滞りもなく、僕も人を理解したと称します。法隆寺の塔を・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・科業は、いろは五十韻より用文章等の手習、九々の数、加減乗除、比例等の算術にいたり、句読は、府県名・国尽・翻訳の地理・窮理書・経済書の初歩等を授け、あるいは訳書の不足する所はしばらく漢書をもって補い、習字・算術・句読・暗誦、おのおの等を分ち、・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・たとい学校にて加減乗除・比例等の術を学び得て家に帰るも、世間一般は十露盤の世界にしてたちまち不都合あり。 父兄はもちろん、取引先きも得意先きも、十露盤ばかりのその相手に向い、君は旧弊の十露盤、僕は当世の筆算などと、石筆をもって横文字を記・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
出典:青空文庫