・・・ ふたたび、先日の贋百姓の描写に、あれこれと加筆して行きながら、私は、市井に住むことの、むずかしさを考えた。 隣部屋で縫物をしていた妻が、あとで出て来て、私の応対の仕方の拙劣を笑い、商人には、うんと金のある振りを見せなければ、すぐ、・・・ 太宰治 「市井喧争」
・・・最高の苦しみくぐり抜けて、わがまことの創生記、きっと書いてあげます、芥川賞授賞者とあれば、かまえて平俗の先生づら、承知、おとなしく、健康の文壇人になりましょう、と先生へおたより申し、よろしく御削除、御加筆の上、文芸賞もらった感想文として使っ・・・ 太宰治 「創生記」
・・・ 遠慮なく加筆したところもあり、削ったところもございます。何卒あしからず。「この頃の若いもの云々」の話、率直に申すと、貴方の仰云った憂鬱感に対して主として感じた座談以上のものでありませんからおやめに致しましょう。 それから、ブラ・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・以来彼女が傾倒し師事していた当時の大家ルパアジュが加筆したような噂がつたえられた。そのルパアジュは三十六歳で、そのときはもう病床で生と死との境にあった。マリアは、この画をかくために、街頭スケッチまでして努力したのであった。ここで、私たちは一・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
出典:青空文庫