・・・ と肩を怒らして大手を振った、奴、おまわりの真似して力む。「じゃ、何だって、何だってお前、ベソ三なの。」「うん、」 たちまち妙な顔、けろけろと擬勢の抜けた、顱巻をいじくりながら、「ありゃね、ありゃね、へへへ、号外だ、号外・・・ 泉鏡花 「海異記」
・・・見給え、うんと力むと、ほら、むくむく実がふくらむ。も少し力むと、この実が、あからんで来るのだよ。ああ、すこし髪が乱れた。散髪したいな。」 クルミの苗。「僕は、孤独なんだ。大器晩成の自信があるんだ。早く毛虫に這いのぼられる程の・・・ 太宰治 「失敗園」
・・・蓋し意の有無と其発達の功拙とを察し、之を論理に考え之を事実に徴し、以て小説の直段を定むるは是れ批評家の当に力むべき所たり。 二葉亭四迷 「小説総論」
出典:青空文庫