・・・そして、十三年も勤続している彼の身の上にもやがてこういうことがやって来るのではないかと、一寸馬鹿らしい気がした。が、この場合、与助をたゝき出すのが、主人に重く使われている自分の役目だと思った。そして、与助の願いに取り合わなかった。 与助・・・ 黒島伝治 「砂糖泥棒」
・・・何十年かの勤続も水泡に帰するんだから。そうして、あなたの妻子が泣くんだから。ところが、こっちはもう、仕事のために、ずっと前から妻子を泣かせどおしなんだ。好きで泣かせているんじゃない。仕事のために、どうしても、そこまで手がまわらないのだ。それ・・・ 太宰治 「家庭の幸福」
・・・七番 十五年二十年の勤続、熟練工が多い。 中々まとめ難い。 ○五工 は家庭器具で一 二 三階とも工人密集して働き、年が若く、女が多い。現在1割「××モーター」三百名ほどまとまり、十銭の会費完納。一部でヒ行器のエンジ・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・工場に勤続二十五年の労働者だ。親父は一九一八年に党員になった。 ワーニカは、「鎌と鎚」工場の工場学校でずっと勉強し、共産党青年だ。去年、工場委員会が彼を職業組合へ推薦して、モスクワ大学で経済と法律の勉強をするようにしてくれた。 ワー・・・ 宮本百合子 「ワーニカとターニャ」
・・・十三年四月赤松殿阿波国を併せ領せられ候に及びて、景一は三百石を加増せられ、阿波郡代となり、同国渭津に住居いたし、慶長の初まで勤続いたし候。慶長五年七月赤松殿石田三成に荷担いたされ、丹波国なる小野木縫殿介とともに丹後国田辺城を攻められ候。当時・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
出典:青空文庫