・・・僕は自分の左脇にかかえるようにしてツネちゃんを療養所に連れ込み、医務室へ行った。出血の多い割に、傷はわずかなものだった。医者は膝頭に突きささっている鉛の弾を簡単にピンセットで撮み出して、小さい傷口を消毒し繃帯した。娘の怪我を聞いて父親の小使・・・ 太宰治 「雀」
・・・すでにその二年前の明治四十年、十一月十五日に陸軍々医総監に任ぜられ、陸軍省医務局長に補せられている。その前年の明治三十九年に、功三級に叙せられ、金鵄勲章を授けられ、また勲二等に叙せられ、旭日重光章を授けられているのである。自重しなければなら・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・ ――オイ、医務室へ行って医師にすぐ来てもらえ! そして薬箱をもってついて来い。 看守長は、お伴の看守に命令した。 ――ああ、それから、面会の人が来てますからね。治療が済んだら出て下さい。 僕が黙ったので彼等は去った。 ・・・ 葉山嘉樹 「牢獄の半日」
・・・ 体育室の設備のよさは、プロレタリア・スポーツの誇りだ。 医務室がある。 法律相談所がある。 ゴルロフカの母親たちの便利も決して見落されてはいない。「母と子の室」。 あらゆる明るい部屋部屋にゴルロフカの炭坑労働者の男女の・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
出典:青空文庫