・・・まで名の残る位の釣堀さえあった位ですから、竿屋だとて沢山ありましたろうに、当時持囃された詩人の身で、自分で藪くぐりなんぞをしてまでも気に入った竿を得たがったのも、好の道なら身をやつす道理でございます。半井卜養という狂歌師の狂歌に、浦島が釣の・・・ 幸田露伴 「幻談」
・・・落かかり障子はやぶれ畳はきれ雨もるばかりなれども、机に千文八百ふみうづたかくのせて人丸の御像などもあやしき厨子に入りてあり、おのれきものぬぎかへて賤が著るつづりおりに似たる衣をきかへたり、此時扇一握を半井保にたまひて曙覧にたびてよと仰せたり・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・彼女がはじめて小説を書こうとしはじめたとき、その相談のため半井桃水という文学者との交渉があった。樋口一葉ほどの才能のある女が、桃水のような凡庸な作家とどうして親しくなったかということが、研究者の間でよく話題にされる。小説「雪の日」の題材とな・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
出典:青空文庫