・・・僕は――といえば、急に問題が卑小化して恐縮だが、キリスト教はまだつかめぬが、キリスト教の信者の言葉の空しさだけはつかんだと思っている。 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・ 従って魔法を分類したならば、哲学くさい幽玄高遠なものから、手づまのような卑小浅陋なものまで、何程の種類と段階とがあるか知れない。 で、世界の魔法について語ったら、一月や二月で尽きるわけのものではない。例えば魔法の中で最も小さな一部・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・ 日頃酒を好む者、いかにその精神、吝嗇卑小になりつつあるか、一升の配給酒の瓶に十五等分の目盛を附し、毎日、きっちり一目盛ずつ飲み、たまに度を過して二目盛飲んだ時には、すなわち一目盛分の水を埋合せ、瓶を横ざまに抱えて震動を与え、酒と水、両・・・ 太宰治 「禁酒の心」
・・・もう一人は、時に意表に出たり、失敗したりもするかもしれないが、この人物のすることならよしんば失敗であったにしろ、決して卑劣卑小な動機から行動して失敗したりすることはあり得ない人物と思われているとする。かけられている信頼の度は二人のうちどちら・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・て敵ながらあっぱれなものであると現代日本のブルジョア反動文学者群の世界観を局部的にでも撃破克服した点にあるのではなく、逆にプロレタリア文学の中からでもこれくらい俺らの口にかなう作品も出るのだと、彼らに卑小な自己満足を味わせた点に根拠している・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
出典:青空文庫