・・・象が人間に負けているのは知恵のせいではない。協力ということができないだけが彼らの弱みではないかと思われる。協同した暴力の前には知恵などはなんの役にも立たないことは人間の歴史が眼前に証明している。 犀というものがどうにも不格好なものである・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・その際もしも全市民が協力して一生懸命に消火にかかったらどうなるか。市民二百万としてその五分の一だけが消火作業になんらかの方法で手を貸しうると仮定すると、四十万人の手で五千か所の火事を引き受けることになる。すなわち一か所につき八十人あてという・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・その際もしも全市民が協力して一生懸命に消火にかかったらどうなるか。市民二百万としてその五分の一だけが消火作業に何らかの方法で手を借し得ると仮定すると、四十万人の手で五千箇所の火事を引受けることになる。すなわち一箇所につき八十人宛ということに・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・砲煙弾雨の中に身命を賭して敵の陣営に突撃するのもたしかに貴い日本魂であるが、○国や△国よりも強い天然の強敵に対して平生から国民一致協力して適当な科学的対策を講ずるのもまた現代にふさわしい大和魂の進化の一相として期待してしかるべきことではない・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・ 思うにこの私案の第一歩の試みを最も有効に遂行するためには、おそらく言語学者と科学者との協力が必要ではないかと思われる。もしこの両者が共同し、その上に機械的の計算や統計を担当する助手の数人の力をかりることができれば、仕事はかなりおもしろ・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・ 北極をめぐる諸科学国が互いに協力して同時的に気象学的ならびに一般地球物理学的観測を行なういわゆるインターナショナル・ポーラー・イヤーに際会してソビエト政府は都合八組の観測隊を北氷洋に派遣した。その中の数隊は極北の島々にそれぞれの観測所・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・これらは器械技術者と監督との協力によってどうにもなることと思われる。 映像の場合にも肉眼と写真カメラとの本質的差違のためにいろいろの問題は起こるが、これはもう周知の事でありこのためにいろいろのおもしろいトリックができるのである。 光の伝・・・ 寺田寅彦 「耳と目」
・・・これらの若い人たちが自分たちの歴史の発展のいちばん確かな道として踏みしめてゆこうとしているのは、真実のある、男女がお互いに正直に協力し幸福に生きてゆく可能の保障された新しい社会関係をうちたててゆく道である。ほんとうに新しい人間らしい仕組みの・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・なぜならば、機会ある毎にアジア民族の解放を妨げることしかしてこなかった日本の帝国主義は、こんにちでも決してその根拠と、協力する勢力を失っておらず、現在ではますます日本の民主化とポツダム宣言による平和の確保がおびやかされてきているからです。こ・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・なぜといえば、トルーマン再選を奇蹟的だの意外だのと書きながら、一方でその新聞は、トルーマンは彼の困難な選挙活動のはじまりから、非民主的だった第八十議会の実状を率直に訴えれば、アメリカ市民は彼に協力するにちがいないという十分の確信にたっていた・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
出典:青空文庫