・・・ないちゅうんで、家族総出、もっとも年寄りと小さいのは留守番にして総勢五人弁当持ちで朝暗い内から起きて京都の堀川まで行ったんですが……、いや、目的の金巾はあることはあったんですが、先方の言うのには千万円単位でなくちゃ渡せんちゅう訳でがしてね、・・・ 織田作之助 「世相」
・・・共同体の基本は父母であり、氏族であり、血と土地と言語と風習と防敵とを共同にするところの、具体的単位がすなわちくになのである。共生ということの意味を生活体験的に考えるならば、必ず父母を基として、国土に及ばねばならぬ。そしてわれわれに文化伝統を・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・そうした表現が今日の場合抽象にすぎるならば、人間生活の具体的な単位である国民道を共に生き得るときは結合せよ。その希望が持てず、その見通しができないときは別離せよ。とでもいっておいて大過ないであろう。かくてなお不幸にして一つの結合に破れたから・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
・・・素量説なるものは取りも直さずこの作用に一定の単位があるという宣言に過ぎない。この「純数」がおそらくある出来事の「確率」と結び付けられるものであろうと云っている。これに対するアインシュタインの考えは不幸にしていまだ知る機会を得ない。ただ彼が昨・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ これらの原始的なしかし驚嘆すべき計量単位の巧妙な系統によって、われわれの祖先は遠い昔から立派な力学的世界像を構成していた。近ごろになってわれわれはそれを少しばかり整理しみがき上げて、そうしていかめしい学という名をつけたのである。 ・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・水を根気よく振っていると少し温まるといったような実験から、進んで熱の器械的当量が数量的に設定されるまで、それからまた同じように電気も、光熱の輻射も化合の熱も、電子や陽子やあらゆるものの勢力が同じ一つの単位で測られるようになるまでに行なわれて・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・それを測る単位としていろいろのものがあるうちで、物理学で選ばれた単位が「秒」である。これは結局われわれの身近に起こるいろいろな現象の観測をする場合に最も「手ごろな」単位として選ばれたものであることは疑いもない事実である。いかなるものを「手ご・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・ 一秒時間に十八万六千マイルを走る光が一ヶ年かかって達する距離を単位にして測られるような莫大な距離をへだてて散布された天体の二つが偶然接近して新星の発現となる機会は、例えば釈迦の引いた譬喩の盲亀百年に一度大海から首を出して孔のあいた浮木・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・ 乗客が単位時間内に一つの停留所に集まって来る割合は、だいたいにおいてはそれぞれの時刻と場所によりおのおの一定の平均値があって、実際上はやはりその平均値の近くに偶然的変異を示すものと考えても不都合はない。そうすると一つの電車が収容すべき・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・山脈や河流の交錯によって細かく区分された地形的単位ごとに小都市の萌芽が発達し、それが後日封建時代の割拠の基礎を作ったであろう。このような地形は漂泊的な民族的習性には適せず、むしろ民族を土着させる傾向をもつと思われる。そうして土着した住民は、・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
出典:青空文庫