・・・ただ必要に応じて差しつかえのない程度まで単位の長さや重さに近いように作ったものに過ぎない。生徒に実験を授ける際に一度は必ずこういう点にも注意を喚起しなければならぬと思う。紙の尺度や竹の尺度などを比較させて見るもよかろうし、また十グラムの分銅・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・一メートルの標準尺度の二つの目盛りの中心の間を単位とすれば一メートルの尺度はそれただ一つである。そして頼みに思うその唯一の長さは、実は前に煩わしく述べたような訳であまり一定なものではないのである。 有難い事には万物相関の影響は収斂級数で・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・れて、木村項の周囲にある暗黒面は依然として、木村項の知られざる前と同じように人からその存在を忘れられるならば、日本の科学は木村博士一人の科学で、他の物理学者、数学者、化学者、乃至動植物学者に至っては、単位をすら充たす事の出来ない出来損ないで・・・ 夏目漱石 「学者と名誉」
・・・ 連続と云う字を使用する以上は意識が推移して行くと云う意味を含んでおって、推移と云う意味がある以上は意識に単位がなければならぬと云う事とこの単位が互に消長すると云う事とは消長が分明であるくらいに単位意識が明暸でなければならぬと云う事と意・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・生活との経済的なくみうちが前面にのっていて、しかも、これまでの日本の社会では、経済上、自立した一つの単位として見られることのなかった主婦、母たちのもがきであるために、苦悩と混乱とは名状しがたい。手記をかいている少数の人々の生活でさえそうなの・・・ 宮本百合子 「『この果てに君ある如く』の選後に」
・・・ 私たちの耳目が満州・支那に向けられ、又ポーランドに向けられている今日の生活感情は、破壊と建設と葛藤との世界的な規模のなかで、沈着にその落着かなさに当面し、自分たちの結婚をもただ数の上での一単位としてばかり見ず、明日に向ってよりましな社・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・ 過去の若い日本のプロレタリア文学の運動が文学の政策において、機械的なものをもっていたとしても、社会生活の歴史に於てインテリゲンツィアが抽象的な知識階級として独立した単位でないことは、知識人こそその知識を何かの形でいずれかの階級のものと・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ ――女だって、生産単位としてソヴェトでは男とすっかり同じだ。同じ労働は同じ賃銀を払われる。五日週間で働いてる。元旦だって平日だ。番に当った者だけが休む。特別なことは何にもない。ただ、大晦日の晩、労働者クラブで何か催しがある。芝居とか、・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・ プロレタリアートは永い経験によって、プロレタリアートの十八歳の女は、職場で立派に一人前の生産単位であることを知っています。十八歳の娘が、集会で意見を述べ、また述べるべき実際的な意見をもってることを知っている。だから、彼女らに選挙権が・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 併し形はそうであるけれども、女がそれによって、つまり男によって食わせてもらって居るか或はそれとも合意的に一時的に生産単位として独立して居る女が男とそういう関係を結んで居るかということで随分又社会的の意味は違って来る。 現在の若い共・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
出典:青空文庫